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臨床系 2018年座談会
骨ミネラル代謝研究・臨床における国内外の動向

司会
竹内 靖博 先生(虎の門病院内分泌センター センター長)

座談会メンバー
秋山 治彦 先生(岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻病態制御学講座 整形外科学分野 教授)
井上 大輔 先生(帝京大学医学部医学科ちば総合医療センター 第三内科学講座 教授)
萩野 浩 先生(鳥取大学医学部保健学科 教授)

秋山先生、竹内先生、萩野先生、井上先生
(左から)秋山先生、竹内先生、萩野先生、井上先生

はじめに

竹内本日は、臨床にかかわる視点からみた骨代謝研究の現状について、第一線でご活躍中の秋山治彦先生、井上大輔先生、萩野浩先生にお集まりいただき、「骨ミネラル代謝研究・臨床における国内外の動向」というテーマで討論を行いたいと思います。内科領域と整形外科領域それぞれにおける骨ミネラル代謝疾患の治療に関する最近の進歩、および骨粗鬆症と骨折に関する医療連携、この3つを大きな軸としてお話しいただければと思います。

竹内靖博先生
竹内靖博先生

内科領域における治療の進歩

竹内それでは初めに井上先生、内科領域における治療のトピックスについて、お願いいたします。

・骨粗鬆症治療薬

井上骨粗鬆症治療薬のトピックスについてお話ししますと、骨形成促進薬の抗スクレロスチン抗体ロモソズマブ、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)誘導体アバロパラチドの2つが注目されており、近々に日本でも上市されるのではないかという状況です。
ロモソズマブは,月1回の注射剤であり、2016年のFRAME試験におけるPhase 3の結果によると、骨密度が1年で顕著に上がり、椎体骨折も防ぐという内容が報告されました。後療法としてアレンドロネートを続けて投与する逐次療法の結果も報告され、増加した骨密度が維持されるという結果が出ています。逆にビスホスホネートからの移行ではテリパラチドよりも優れた効果が報告されています。また,男性骨粗鬆症における骨密度に関してもよい結果が公表されている状況です。
アバロパラチドは、PTHrP(1-34)のうち8個のアミノ酸を置換した形の誘導体で、骨密度増加作用を保持したまま安定性を保っており、高カルシウム(Ca)血症が出にくいという観点からスクリーニングされた薬です。臨床試験はPhase 3まで報告済みで骨密度、椎体骨折防止などのデータで非常によい結果が出ておりますが、米国では食品医薬品局(FDA)で承認されたものの欧州医薬品庁(EMA)で承認されていない状況です。日本でも近々に上市されるのではないかと期待されています。また、こちらも後療法としてアレンドロネートを投与した試験がありますが、同じく良好な結果で、骨密度が継続して上昇し、さらに骨折リスクの抑制も維持されるという報告がなされています。

秋山ロモソズマブやアバロパラチド、テリパラチドを使用して、後治療として投与すべきはビスホスホネートか、デノスマブかという問題ですよね。開業医の先生方にしても、どういう形で使用していくのが最も効果的なのか、また患者さんが治療を続けてくれるかという懸念にも繋がります。選択肢が増えるのは勿論望ましいことですが、同時に、どれが最も効果的で、患者さんにとってもよいものなのかを示さなければ、臨床の現場では扱いが難しいのではないかと思います。

井上骨形成促進薬は後療法を行うのがスタンダードになるのではないかと思います。その際、後療法に関しても、薬剤の効果やhip fractureのエビデンスからするとデノスマブがよさそうですが、投与中止時のリバウンドに注意する必要があります。そこでデノスマブで引っ張りすぎず、最終的にビスホスホネートで軟着陸させていくような後治療ということで「骨形成促進薬、デノスマブ、ビスホスホネート」というのが、1つのパターンになっていくのではないのかと考えています。

竹内現行の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(2015年版)では各治療薬を単剤で投与した場合の効果のエビデンスという形で提示されていますので、診療現場では個々の患者さんに適した使い分けや薬剤の切り替えの原則について悩むことが多いと想像されます。今後の改訂では患者さんの臨床像に即して、どのような薬剤をどのような順番で投与するのが望ましいかというところまで踏み込めればよいと思いますので、そのためのエビデンスが構築されることに期待したいですね。

井上今後、併用療法は重要になってくると思います。骨粗鬆症領域では医療経済的な問題もあり、併用は難しいという扱いですが、併用がよい結果をもたらすというデータも出てきているので、それが認められるようになれば、また少し治療の状況が変わるのではないかと思います。
また、デノスマブは2017年に、骨粗鬆症だけではなく関節リウマチに伴う骨びらんの抑制でも認められました。また、骨密度に関してのみですが、ステロイド性骨粗鬆症に対するよい成績が公表されており、日本の「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」においても、近々の改訂時にはゾレンドロネートと併せてデノスマブが含められるのではないでしょうか。

井上大輔先生
井上大輔先生

・その他の薬剤

井上抗FGF23中和抗体Burosumabに関しましては,FGF23依存性、低リン血症性骨軟化症/くる病のうち、代表的な2つの病態として、遺伝性のX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)と、後天性の腫瘍による腫瘍性骨軟化症(TIO)との2つを治療ターゲットとしています。このBurosumabは、既にXLHに関して、米国でPhase 2が『New England Journal of Medicine』に、Phase 3が『JBMR』に公表されており、小児・成人ともに承認されている状況です。日本でも、近々、XLHに対しては使用できるようになると思います。

竹内井上先生ありがとうございました。ところで秋山先生、デノスマブに関しては、整形外科の領域において、関節リウマチに伴う骨びらんの治療薬としてどのように評価されているのでしょうか?

秋山そうですね。リウマチでは生物製剤と一緒に保険でも認められていますので、デノスマブを使って骨破壊を抑制するということは実際には行われています。しかし、患者さんの金額面での負担が大きい点や、リウマチ患者さんの膝・頚椎の手術は生物学的製剤で激減しており、現在では手術的治療が必要となるのは手指・足趾が多いという背景もあり、デノスマブを使用する意義はそこまで大きくはないかもしれません。

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