日本骨代謝学会

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成長している長管骨における早期の間葉系前駆細胞は軟骨を形成する細胞の一部に由来する

A subset of chondrogenic cells provides early mesenchymal progenitors in growing bones.
著者:Ono N, Ono W, Nagasawa T, Kronenberg HM.
雑誌:Nat Cell Biol. 2014 December;16(12):1157-67.
  • 軟骨細胞
  • 骨芽細胞
  • 間葉系幹細胞

小野 法明

論文サマリー

内軟骨性骨化の特徴は軟骨原基の存在であり、その内部に石灰化基質を形成する骨芽細胞および骨髄における造血を支持する間質細胞が形成される。一方で,これらの間葉系細胞の究極的な由来は明らかにされていない。胎生期の内軟骨性骨化の初期の過程において細胞系譜を解析した結果、主要な軟骨基質であるII型コラーゲン陽性細胞の運命のひとつは傍軟骨膜および一次骨化中心の転写因子Osxを発現する細胞であることが明らかとなった。さらに骨芽細胞の分化において必須である転写因子Runx2の欠損をもつマウスにおいて細胞系譜を解析した結果、II型コラーゲン陽性細胞は傍軟骨膜においてRunx2の発現の上流に位置した。つづいて、骨髄における造血が確立された生後の初期における細胞の分布を検討した結果,長管骨における大部分の骨芽細胞およびCxcl12陽性の間質細胞は、ある時点でII型コラーゲンおよびOsxを発現する間葉系前駆細胞に由来した。II型コラーゲン陽性細胞とOsx陽性細胞との関連をより詳細に検討した結果、胎生期におけるOsx陽性細胞は一過性であり,II型コラーゲン陽性細胞に由来する前駆細胞によりつねに補給される必要のあることが示唆された。一方で生後の骨発生においてもII型コラーゲン陽性細胞に由来する細胞は骨端部の骨芽細胞および間質細胞にくわえ、骨髄脂肪細胞に間断なく貢献した。これに対して生後のOsx陽性細胞は骨端部では一過性に存在しのちに消失する一方で、骨髄間質においては長期にわたり間質細胞として残存した。

さらに、これらの細胞との成体の骨髄間質における間葉系前駆細胞との関連を検討した。 骨髄間質における間葉系前駆細胞はII型コラーゲン陽性細胞の子孫細胞であったが、同時にこれらの間葉系前駆細胞は、II型コラーゲン陽性細胞が骨端部の骨芽細胞および間質細胞に寄与する過程における必須な中間体ではないことが示唆された。最後に、軟骨に関連するそのほかの遺伝子のプロモーターにより標識される細胞が、II型コラーゲン陽性細胞と同様の挙動を示すかどうかを検討した。生後の骨成長において、転写因子Sox9および主要な軟骨基質であるアグリカンの陽性細胞は、II型コラーゲン陽性細胞と同様に、骨端部の骨芽細胞および間質細胞に間断なく貢献した。以上の結果より,軟骨の形成に関連する遺伝子プロモーターにより標識される、成長に関連する間葉系の前駆細胞は、長管骨が急激に成長する時期に骨芽細胞および間質細胞の主要な供給源となり、一方で、そののち、成体におけるより緩慢な骨リモデリング期においては,骨髄の間質間葉系の前駆細胞がその役割をとって代わることが推察された。

小野 法明

著者コメント

この論文はマサチューセッツ総合病院内分泌科のHank Kronenberg研究室で過ごした5年間の仕事の集大成として先日発表されました。東京医科歯科大学で大学院時代に野田政樹先生の指導の下研究に携わった頃から、骨芽細胞系の幹細胞や前駆細胞に興味があり、2009年に学術振興会の支援で渡米する機会を与えて頂きました。かなり挑戦的なプロジェクトとしてスタートしたため、最初の2年間は様々なマウスを作ったりしましたが思うように結果が出ませんでした。その頃ちょうど共同研究としてNestin陽性細胞を骨初期発生において解析するプロジェクトを与えられましたが、非常に興味深いものの意外な結果を見いだしました。その解析の過程で、さらに意外なことにII型コラーゲン陽性細胞の子孫細胞が広く骨組織に寄与することを見いだし、この点に関してはあまり深く解析されていないことに気がつきました。特に骨髄間葉系細胞との関連を調べて行くとさらに興味深いことが分かり、今回非常にいいタイミングで発表することができて大変幸運と感じています。5年間Hankと一緒に研究ができたことを誇りに思い、また彼のメンターシップにこの上ない感謝を表したいと思います。(University of Michigan School of Dentistry Department of Orthodontics & Pediatric Dentistry・小野 法明)