日本骨代謝学会

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ラット脊椎固定モデルにおいてBMP誘導新生骨にテリパラチド間欠投与が与える効果

Effect of intermittent administration of Teriparatide (parathyroid hormone 1-34) on bone morphogenetic protein-induced bone formation in a rat model of spinal fusion.
著者:Morimoto T, Kaito T, Kashii M, Matsuo Y, Sugiura T, Iwasaki M, Yoshikawa H.
雑誌:J Bone Joint Surg. Am. 2014; 96(13):e107
  • 骨形成蛋白(BMP)
  • PTH(1-34)
  • 骨再生医療

海渡 貴司

論文サマリー

欧米では、特に脊椎固定術の分野でBone morphogenetic protein(BMP)は広く臨床使用され、骨形成・骨癒合促進作用が実証されている。しかしながらFDAの脊椎固定術に対するBMP使用の認可は腰椎前方固定術のみに限定されており、実際に臨床におけるBMPの使用は“適応外使用(off-label use)”であるのが現状である。これは高濃度のBMP使用に由来する炎症反応や浮腫、異所性骨化などの合併症により安全性が担保されていないことによる。そこでより効率的にBMPのbioactivity を高める対策が求められている。Teriparatide(PTH1-34)はanabolic作用を有する骨粗鬆症治療薬として認可された薬剤であるが、近年PTH1-34によるBMPシグナルのup-regulation・modulationが報告され、BMPとPTHの併用による相乗効果が期待される。我々は、ラット脊椎固定モデルを用いて、BMP移植(低用量/高用量)による骨形成・骨癒合促進作用に対するPTH1-34間欠投与(術前2週、術後6週)の影響を検討した。結果、BMP低用量使用群においてPTH1-34投与は骨癒合率を有意に改善し、BMP低用量・高用量両群においてPTH1-34はBMP誘導新生骨の骨質(海面骨構造・皮質骨厚)を著しく改善させた。組織評価においてBMP高用量単独群では新生骨内部は脂肪組織で充填されたのに対し、PTH1-34併用群では内部はtrabecular boneにより充填された。PTH1-34単独投与では効果を認めなかったことから、BMPとPTH1-34の併用は新生骨量および質を相乗的に改善すると考えられる。機序としては、PTH受容体複合体によるBMP antagonistのmodulationやPTH1-34がBMPにより誘導されるWntシグナル抑制因子SOST/Sclerostinの発現を抑制する結果Wntシグナルを活性化し骨形成を促進・脂肪分化を抑制することなどが考えられた。BMP骨組織工学(サイトカイン治療・細胞治療・遺伝子治療)より効率的に骨を作るという目標は、BMPのシグナル伝達機序や骨代謝制御メカニズムの解明により、BMP誘導骨の質の改善・空間的制御・リモデリングなど新たなフェーズに動いている。

海渡 貴司

著者コメント

私のBMPを用いた骨組織工学との関わりは、研修医時代の高岡教授、大学院時代の吉川教授のご指導に始まります。約5年の整形外科臨床の後、留学の機会に恵まれBMPの細胞治療・遺伝子治療に取り組みました。両アプローチでの経験より、新たな骨代謝からのアプローチを思い描いていた折に大阪大学での研究再開の機会をいただきました。大学での研究では吉川教授をはじめ、トップクラスの同僚研究者や優秀な大学院生に恵まれ本研究成果を得ることができました。恩師の方々、グループのメンバーに心より感謝しています。(大阪大学 整形外科・海渡 貴司)