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変形性関節症において、C10orf10/DEPPはミトコンドリアオートファジーを活性化し、軟骨細胞の生存を維持する

C10orf10/DEPP activates mitochondrial autophagy and maintains chondrocyte viability in the pathogenesis of osteoarthritis.
著者:Masanari Kuwahara, Yukio Akasaki, Ichiro Kurakazu, Takuya Sueishi, Masakazu Toya, Taisuke Uchida, Tomoaki Tsutsui, Ryota Hirose, Hidetoshi Tsushima, Takeshi Teramura, Yasuharu Nakashima
雑誌:FASEB J. 2022 Feb;36(2):e22145.
  • 変形性関節症
  • オートファジー
  • C10orf10/DEPP

桑原 正成
左から赤﨑先生、著者、研究室のメンバー

論文サマリー

 リソソーム分解経路であるオートファジーは、細胞恒常性維持に必須であり、軟骨細胞におけるオートファジー機能不全は変形性関節症(OA)病態の特徴である。しかしながら、その原因については未だ十分に解明されていない。近年、C10orf10/Decidual protein induced by progesterone(DEPP)が、オートファジー活性化に重要であると報告されたことを背景に、本研究では、DEPPが軟骨細胞のミトコンドリアオートファジーを正に制御し、OA病態に深く関与していることを明らかにした。

 ヒトOA軟骨細胞では、正常軟骨細胞と比較してDEPPの発現が低下し、飢餓や活性酸素種(H2O2)、低酸素(CoCl2)によりDEPPの発現が誘導された。機能面では、DEPPノックダウンによりH2O2によって誘導されるオートファジーフラックスが減少した。一方で、DEPP過剰発現によりオートファジーフラックスが増加し(図1)、H2O2に対する酸化ストレス抵抗性が維持された。また上流因子解析において、DEPPはForkhead box class O(FOXO)転写因子のノックダウンにより、その発現が低下し、FOXO3により制御されるオートファジー機能を調節した。内側半月板不安定化によるOAモデルにおいて、DEPPノックアウトマウスでは軟骨変性増悪(図2)とTUNEL陽性細胞の増加を認めた。また、ノックアウトマウスから分離した軟骨細胞は、オートファジーフラックスが低下し、H2O2に対する酸化ストレス抵抗性が減弱した。さらに、細胞分画解析では、DEPPはミトコンドリアに局在し(図3)、BCL2 interacting protein 3(BNIP3)を介して、ミトコンドリアオートファジーを活性化していることを明らかにした。

 本研究により、DEPP は軟骨細胞においてミトコンドリアオートファジーの活性化に関与する主要なストレス誘導性遺伝子であり、OA 病態における軟骨細胞の生存を維持すると結論づけた。DEPPはOA患者のオートファジーを促進するための治療標的となりうる可能性がある。

桑原 正成
図1

桑原 正成
図2

桑原 正成
図3

著者コメント

 オートファジーはOAを含む加齢性疾患に深く関与する分子機構であり、近年、OA治療ターゲットとしても期待されています。私がオートファジー活性化因子としてDEPPに注目したのは、DEPPが私達の研究室で解析していたFOXO転写因子のターゲット遺伝子であったことがきっかけです。さらに、ミトコンドリアとの関連も報告されており、非常に興味深い因子でした。このような成果を残せたのは、研究を後押ししていただいた中島康晴教授や、熱心かつ的確なご指導をいただいた赤﨑幸穂講師、津嶋秀俊助教はもちろん、大学院入学時から手取り足取り支えていただいた先輩方や一緒に研究を頑張った後輩たちのおかげです。この場をお借りして深く感謝いたします。今後も整形外科疾患の病態解明や治療発展に少しでも貢献できるように、リサーチマインドを持って、日々精進したいと思います。(九州大学大学院 医学研究院 整形外科・桑原 正成)