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前骨粗鬆症治療期間がロモソズマブ治療に与える影響

Effect of the duration of previous osteoporosis treatment on the effect of romosozumab treatment.
著者:A Tominaga, K Wada, K Okazaki, H Nishi, Y Terayama, Y Kodama, Y Kato
雑誌:Osteoporos Int. 2022 Jan 21. doi: 10.1007/s00198-021-06261-2.
  • 骨粗鬆症
  • ロモソズマブ
  • 骨密度

冨永 絢子

論文サマリー

 ロモソズマブは抗スクレロスチン抗体製剤であり、古典的Wnt/βシグナルのインヒビターであるスクレロスチンを阻害する。この作用により骨形成促進と骨吸収抑制効果を発現し、大きな骨密度上昇効果をもたらす。最新の論文では、ロモソズマブ直前に行っていた骨粗鬆症治療薬が、ロモソズマブの効果に影響を及ぼすと報告されている。今回我々は12カ月間のロモソズマブ治療において、前治療薬の投与期間がロモソズマブの効果に影響するか検討した。各前治療薬毎に1年以内または、1年超過の使用に分類した。つまり新規骨粗鬆症治療開始群(NON:121例)、テリパラチド1年以下(TPDless1Y:26例)、テリパラチド1年超過(TPDmore1Y:21例)、デノスマブ1年以下(DMABless1Y:24例)、デノスマブ1年超過(DMABmore1Y:16例)、ビスホスホネート1年以下(BISless1Y:18例)、ビスホスホネート1年超過(BISmore1Y:33例)である。

1)テリパラチド
NON群、TPDless1Y群、TPDmore1Y群での比較を行った。3群間で12カ月時点での脊椎骨密度変化率と股関節骨密度変化率について比較検定を行ったところ、脊椎・股関節骨密度変化率共に有意差を認めなかった。
2)デノスマブ
NON群、DMABless1Y群、DMABmore1Y群での比較を行った。脊椎骨密度変化率について、3群間で比較検討を行ったところNON群と比較してDMABmore1Y群で変化率が有意に低かった(p=0.0105)。股関節骨密度変化率は3群比較で有意な差は認められなかった。
3)ビスホスホネート
NON群、BISless1Y群、BISmore1Y群での比較を行った。3群間で脊椎骨密度変化率を比較検討すると、NON群と比較してBISmore1Y群の変化率は有意に低値であった(p=0.0297)。股関節骨密度変化率の3群比較では有意差は認めなかった。

 本研究により、前骨粗鬆症治療の投与期間もロモソズマブの治療効果に影響を与えることが判明した。テリパラチドは明らかな治療期間による影響は受けなかったが、デノスマブとビスホスホネートは、治療期間により骨密度変化率に有意差を認めた。デノスマブやビスホスホネート使用症例をロモソズマブに移行する場合は、投与が短期間の内にロモソズマブへ変更した方が骨密度の上昇がよいと考えた。

冨永 絢子

著者コメント

 本研究を始めたきっかけは、臨床の現場でロモソズマブ使用でも骨密度上昇率が低い症例があり、前骨粗鬆症治療薬が同一剤にも関わらず、ロモソズマブの効果が一定ではないことを感じたためです。著者には子供が3人いるので、診療と育児の合間に細々と執筆した本論文がOsteoporosis Internationalに掲載されたことを大変嬉しく思います。今後も臨床を通した疑問点などを検証し、新たな知見を広げられるように努力していきたいと思っています。(東京女子医科大学整形外科・冨永 絢子)