マウスの骨再生過程において、マクロファージはH型血管新生に必須である
著者: | Yukihiro Kohara, Riko Kitazawa, Ryuma Haraguchi, Yuuki Imai, Sohei Kitazawa |
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雑誌: | Bone. 2021 Sep 14;154:116200. |
- マクロファージ
- 骨再生
- RNA-seq
論文サマリー
マクロファージは,主に免疫細胞として働くが,生理的条件下で骨代謝を司っている。 造血幹細胞から分化したマクロファージは,細菌などの非自己組織を貪食し,Tリンパ球に抗原を提示するなど,生体防御の要として機能している。 マクロファージFas誘導アポトーシス (MaFIA) マウスモデル、CD169-ジフテリア毒素受容体 (DTR) マウスモデル、クロドロネート-リポソーム (Clod-lip) の投与など、いくつかの方法でマクロファージを減少させると、骨形成が著しく低下することが報告されている。これらは、マクロファージが食細胞としてだけでなく、骨芽細胞の骨同化作用を直接または間接的にサポートしていることを示唆している。 しかし、マクロファージがどのように骨形成に介在しているかは、完全には解明されていなかった。
骨は、破骨細胞によって常に吸収され、骨芽細胞によって再生され、生理的条件下で新しい骨を作っている。 骨折後の骨再生も通常は速やかに行われるが、骨折患者の約5~10%には、遅発性の癒合や非癒合が生じることがある。 このような骨修復の細胞・分子メカニズムを解明することは、骨再生医療の発展に大きく寄与すると考えられている。 マクロファージも骨折後の骨再生に関与していると提唱されているが、そのメカニズムは不明であった。
本研究では、ドリルホール損傷による皮質骨欠損モデルC57BL/6Jマウスを用いて、Clod-lipを投与しマクロファージを減少させると、血管新生と骨形成をカップリングするH型血管の新生が阻害されることを明らかにした。 さらに、RNA-seq解析により、マクロファージが分泌する”血管新生”と”創傷治癒”を媒介する因子の遺伝子として、Tgfbi (TGFBIをコードする)、Plau(uPAをコードする)、Tgfb1(TGF-β1をコードする)を同定した。 これらのmRNAは、qRT-PCRにより、骨組織中の細胞の中でも骨髄由来のマクロファージに高発現していることがわかった。 最後に、uPA阻害剤 (Amiloride Hydrochloride) やTGF-β受容体I、受容体II阻害剤 (LY-364947) を投与すると、損傷後の骨再生が損なわれることを明らかにし、骨再生におけるuPAとTGF-β1の重要性を確認した。 今回の結果は、マクロファージを介した新しい骨再生のメカニズムを提唱したものである。
マクロファージを介した骨再生メカニズムのモデル案
著者コメント
本研究を遂行するにあたって、貴重なお力添えを頂いた共同研究者の皆様方に、厚く感謝申し上げます。現在、転職活動中ですので、人手を探している先生がおられましたらご連絡いただけますと幸いです。(愛媛大学大学院医学系研究科・小原 幸弘)