日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 尾崎 まり

脆弱性骨折患者に対するコーディネーターによる骨粗鬆症治療介入効果

Efficiency of coordinator-based osteoporosis intervention in fragility fracture patients: a prospective randomized trial.
著者:M Osaki, R Okuda, Y Saeki, T Okano, K Tsuda, T Nakamura, Y Morio, H Nagashima, H Hagino
雑誌:Osteoporos Int. 2021 Jan 23. doi: 10.1007/s00198-021-05825-6.
  • 骨粗鬆症リエゾンサービス
  • 骨折の二次予防
  • コーディネーター

尾崎 まり
論文の報告を行った2019年 第21回日本骨粗鬆症学会(@神戸、萩野浩会長)の第一会場にて。
研究協力者と学会の運営を手伝ってくれた同僚たちと

論文サマリー

 骨粗鬆症は、「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大した骨格疾患」と定義されています。骨粗鬆症による脆弱性骨折は、さらなる脆弱性骨折のリスクを高めることが知られており、上腕骨や手首、椎体、股関節の骨折の病歴があると、さらに手首、椎体、大腿骨近位部の骨折のリスクが高まります。脆弱性骨折は日常生活動作(ADL)の低下を誘発し、骨折を繰り返すと運動能力がさらに低下します。

 そこで、粗鬆症性脆弱性骨折発生後に骨粗鬆症治療のコーディネーターが介入することにより、骨粗鬆症治療率と継続率が改善し、二次骨折予防につながるかどうか2年間調査し、コーディネーターの有用性を明らかにすることを目的としました。

 2015年1月から2017年3月に鳥取県内の7医療施設で前向き介入ランダム化比較対象研究を行い、2年間追跡しました。脆弱性骨折を有する50歳以上の閉経後女性および男性を,コーディネーター介入群(LI;70例)と介入なし群(非LI;71例)に無作為に分けました。登録から3カ月後、6カ月後、1年後、2年後の骨密度測定率、骨粗鬆症治療率、骨粗鬆症治療継続率、転倒率、骨折発生率を両群間で比較しました。

 骨粗鬆症治療開始率は、LI群が非LI群に比べて有意に高値でした(85.7% vs. 71.8%; p = 0.04)。骨粗鬆症治療薬継続率は、3か月後、6か月後、1年後ともLI群で高値でしたが、有意差を認めませんでした。また、LI群は非LI群と比較して、登録時(90.0%対69.0%、p=0.00)および登録後6ヵ月後(50.0%対29.6%、p=0.01)の骨密度評価実施率が有意に高値でしたが、登録後1年および2年後では有意差は認めませんでした。また、転倒や骨折の発生率については、両グループ間で有意な差は認めませんでした。

 脆弱性骨折に対するコーディネーターベースの介入は,骨密度評価の実施率と治療率を改善し,骨折後の初期段階における治療継続率を高めました。この結果から、リエゾン介入は、骨粗鬆症の評価や骨粗鬆症治療薬の開始・継続のために、骨折専門医と骨粗鬆症専門医の双方に役立つ可能性が示唆されました。

尾崎 まり
SPLICE研究と名付け、研究のための会議と勉強会を繰り返しました。『骨の健康手帳』と独自に作成し、患者指導に使用しました。

尾崎 まり
院内リエゾン会議

著者コメント

 コーディネーターの活動は保険査収できないため各病院の理解が得られにくく、通常業務をこなしながらコーディネーター活動を行わないといけない状況です。そのため、コーディネーターの活動に対するモチベーションを維持する目的で『鳥取骨折リエゾンサービス(FLS)研究会』をたちあげました。これは多施設の連絡会と講演会からなり、定期的に開催してコーディネーターが日頃の活動報告や問題点を話し合える場とし、何とか4年間の活動を終えることができました。この研究が論文として発表することができましたのも、7医療機関の整形外科医はもちろんのこと、各病院のコーディネーターの皆さん、当院基礎看護学教室の事務員の皆さんのご協力と萩野教授のご指導があったからこそだと思っております。この場を借りて改めて深謝いたします。(鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション科・リハビリテーション部・整形外科・尾崎 まり)