日本骨代謝学会

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Bif-1/Endophilin B1/SH3GLB1は骨恒常性を制御する

Bif-1/Endophilin B1/SH3GLB1 regulates bone homeostasis.
著者:Touyama K, Khan M, Aoki K, Matsuda M, Hiura F, Takakura N, Matsubara T, Harada Y, Hirohashi Y, Tamura Y, Gao J, Mori K, Kokabu S, Yasuda H, Fujita Y, Watanabe K, Takahashi Y, Maki K, Jimi E.
雑誌:J Cell Biochem. 2019 Nov;120(11):18793-18804.
  • Bif-1
  • 破骨細胞
  • 骨芽細胞

自見 英治郎・當山 健弥

論文サマリー

 骨組織の恒常性は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスによって維持される。オートファジーとアポトーシスは、恒常性の維持と細胞および組織の正常な発達に重要である。そこで我々は、オートファジーとアポトーシスに関与するBax相互作用因子1(Bif-1 / Endophillin B1 / SH3GLB1)に着目し、骨代謝調節におけるBif-1の役割を解析した。Bif-1の発現は破骨細胞分化に伴って上昇し、さらに、成熟破骨細胞の細胞質、特に核周囲領域およびポドソームに局在することから、Bif-1が破骨細胞の骨吸収を調節している可能性が示唆された。 Bif-1欠損(Bif-1-/-)マウスは、野生型マウスと比較して、海綿骨量および海綿骨梁数の増加が認められたので、Bif-1は骨吸収を正に調節すると考えた。しかし、Bif-1-/-マウスの骨形態計測の結果は予想に反して、破骨細胞数の増加が観察された。さらに、in vivoの結果と一致して、Bif-1-/-マウス由来の骨髄細胞をRANKLで刺激すると、破骨細胞形成が促進した。しかし、RANKL刺激によるNF-κBやMAPKの活性化、破骨細胞前駆体のCD115 / RANKの発現、破骨細胞の骨吸収活性や生存率には影響しなかった。一方、Bif-1は骨芽細胞も発現しており、Bif-1-/-マウスでは骨形成率と骨芽細胞表面の両方が実質的に増加していた。Bif-1-/-マウス由来の骨芽細胞をβ-グリセロリン酸およびアスコルビン酸で処理すると、野生型マウス由来の骨芽細胞と比較して、骨芽細胞分化と石灰化が亢進した。また、Bif-1-/-マウスの骨髄細胞は、野生型マウスの細胞よりも有意に高いコロニー形成能をもつことから、 Bif-1-/-マウス由来の骨芽細胞前駆細胞は、野生型マウスよりも高いクローン原性と自己複製能を有すると考えられた。すなわち、Bif-1-/-マウスでは、骨吸収と骨形成の両方が亢進しており、骨形成が骨吸収を凌駕することで、骨量の増加が認められたと考えられる。以上の結果より、Bif-1は破骨細胞と骨芽細胞の両方の分化と機能を制御することにより、骨の恒常性を調節すると思われる。(九州大学歯学研究院OBT研究センター・自見 英治郎)

自見 英治郎・當山 健弥
Bif-1が欠損すると、未知のメカニズムを介してRANKL刺激による破骨細胞形成が亢進し、さらに高いクローン生成能と自己再生活性によって骨芽細胞の分化と石灰化を促進することで骨量の増加を示す。

著者コメント

 私は大学院への進学を決めた際に、研究のテーマをどうするか医局の教授や周りの先生方に相談し考えた結果、骨芽細胞や破骨細胞が引き起こす骨の恒常性に興味を持ち本研究を始めました。研究を始めた当初はBif-1が骨に与える影響の解析に苦労し、実験の失敗を繰り返したため何度も挫折しそうになりましたが、研究室のみんなが支えてくれたおかげで今回論文として形に残すことが出来、大変嬉しく思います。ご指導頂きました自見英治郎先生、青木和広先生をはじめ多くの共著者の先生方、またこのような機会を与えて頂いた日本骨代謝学会の先生方に、厚く御礼申し上げます。(九州歯科大学口腔機能発達学分野・當山 健弥)