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CD26シグナル抑制はヒト破骨細胞分化を抑制する

Blockade of CD26 signaling inhibits human osteoclast development
著者:Hiroko Nishida, Hiroshi Suzuki, Hiroko Madokoro, Mutsumi Hayashi, Michiie Sakamoto, Taketo Yamada
雑誌:J Bone Miner Res, May 12, 2014, DOI 10.1002/jbmr.2277
  • CD26
  • 破骨細胞
  • p38MAPK

西田 浩子
右:筆頭著者・西田、左:最終著者・山田

論文サマリー

CD26は、Dipeptidyl Peptidase(DPP)-IV活性を有する分子量110KDaの膜貫通型糖蛋白で、メモリーTリンパ球、腎尿細管上皮、肝毛細胆管、血管内皮などに発現しており、T細胞活性化や糖代謝に関与することが知られている。また悪性中皮腫、悪性リンパ腫、腎癌などの多くの悪性腫瘍においてCD26の高発現が見られることが明らかとなってきた。この報告で私たちは、正常ヒト破骨細胞においてCD26が機能的に発現していること、悪性腫瘍の溶骨性骨病変において活性化破骨細胞にCD26が高発現することを見出した。そしてヒト破骨細胞形成過程におけるCD26の役割、ヒト化抗CD26 モノクローナル抗体がヒト破骨細胞形成におよぼす効果および作用機序について明らかにした。まずヒト骨髄単核球をM-CSFおよびsRANKL添加下で培養を行うと、単球・マクロファージ・破骨前駆細胞・破骨細胞と分化が進行し、分化とともにCD26発現は増強した。破骨前駆細胞をsRANKLで刺激すると細胞質内MMK3/6、p38MAPKおよび核内のmi/Mitfリン酸化が促進され、TRAP発現が誘導されるとともにCD26発現も増加し成熟破骨細胞が分化誘導された。この破骨細胞培養へヒト化抗CD26モノクローナル抗体を添加すると、抗体濃度依存性に破骨細胞分化は抑制され、骨吸収活性能、TRAP活性も阻害された。ヒト化抗CD26モノクローナル抗体は、破骨前駆細胞の分化段階においてsRANKL刺激後のMKK3/6、p38MAPKリン酸化を速やかに抑制し、引き続き核内のmi/Mitfリン酸化を阻害することで、TRAP発現を抑制、破骨前駆細胞の多核化および破骨細胞分化を阻害した。一方、成熟分化した破骨細胞に抗体処理を行っても破骨細胞機能抑制は認められなかった。つまり本抗体は、直接、成熟破骨細胞の機能に効果を及ぼすのではなく、破骨細胞の形成の早期において破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を抑制するものと考えられた。またDPPIV阻害剤は、破骨細胞形成および分化には効果はなく、CD26の有するDPPIV活性は破骨細胞分化には関与していないと考えられた。このようにヒト破骨細胞においてはCD26の機能的な発現があること、さらに悪性腫瘍ではCD26高発現があることから、ヒト化抗CD26モノクローナル抗体が抗腫瘍効果をもたらすだけでなく、破骨細胞の分化抑制を通じて悪性腫瘍の骨浸潤・転移における溶骨性病変の形成を抑制させるための新たな治療戦略となることが期待される。

西田 浩子
TRAP(赤)/CD26(藍)陽性破骨細胞、x40

著者コメント

著者は血液内科医で、現在、病理学教室で基礎研究をしています。造血器腫瘍において多発性骨髄腫は高齢者を主体とする難治性疾患であり、新規の治療法の開発は急務です。特に合併する溶骨性骨病変による疼痛や骨折は患者の生活の質を著しく低下させます。私たちは前臨床試験において、悪性中皮腫、腎癌においてヒト化抗CD26モノクローナル抗体療法の有用性を確認してきました。さらに本抗体の第I相臨床治験への準備をする中で、CD26陽性癌の骨転移病変を免疫染色したところ、偶然にも破骨細胞にCD26が発現していることを発見しました。これが、今回報告した論文の研究の発端となりました。今後は骨髄腫治療において本抗体を新規治療薬と併用することで、腫瘍抑制とともに骨関連事象の減少を果たせれば、と考えています。(慶應義塾大学・西田 浩子)

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