日本骨代謝学会

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原発性副甲状腺機能亢進症マウスモデルの頭蓋骨において、DMP1低下はFGF23発現を促進させる

Attenuated Dentin Matrix Protein 1 Enhances Fibroblast Growth Factor 23 in Calvaria in Primary Hyperparathyroidism Model.
著者:Nagata Y, Imanishi Y, Ohara M, Maeda-Tateishi T, Miyaoka D, Hayashi N, Kurajoh M, Emoto M, Inaba M.
雑誌:Endocrinology. 2019 May 1;160(5):1348-1358.
  • 原発性副甲状腺機能亢進症
  • FGF23
  • DMP1

永田 友貴

論文サマリー

【背景・目的】
 副甲状腺機能亢進症において、過剰分泌された副甲状腺ホルモン(PTH)によって線維芽細胞増殖因子23 (FGF23)の分泌は増加する。骨で発現するDentin matrix protein 1 (DMP1)はFGF23発現を抑制し、PTHによってその発現は低下するが、原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)における役割は未だ不明である。今回、上記モデルにおけるPTHのFGF23上昇機構におけるDMP1の役割について検討した。

【方法】
 PHPTモデルマウスおよび野生型(WT)マウス頭蓋骨、マウス骨芽細胞初代培養系を用いて、PTHによるFGF23、DMP1の遺伝子及びタンパク発現を検討した。さらに、ラット骨芽細胞株であるUMR106細胞を用いて、PTHによるFgf23遺伝子発現上昇機構に対するPKAおよびDMP1の関与を検討した。

【結果】
 PHPTマウスは、WTマウスと比較し、高Ca血症、低P血症、高PTH血症および高FGF23血症を呈した。PHPTマウス頭蓋骨組織における遺伝子及びタンパク発現はWTマウスと比較し、FGF23上昇およびDMP1低下を認めた。免疫組織化学染色法でも、PHPTマウスにおいてFGF23陽性細胞数は増加し、DMP1陽性細胞数は減少した。別のPHPTモデルとして、PTH持続投与マウスでも検討を行い、やはり頭蓋骨DMP1発現は低下することを確認した。骨芽細胞の初代培養ではPTH添加によりFGF23遺伝子及びタンパク発現は上昇し、DMP1は低下した。UMR106細胞系において、PTHは濃度依存的にFgf23発現を上昇させ、Dmp1発現を低下させた。PKA作動薬であるforskolinは、濃度依存的にFgf23発現を上昇させ、Dmp1発現を低下させた。PTHにより上昇したFgf23発現は、PKA阻害剤であるH89により一部低下し、PTHにより低下したDmp1発現はH89により一部回復した。さらにPTHおよびsiRNAによるDmp1発現抑制は、相加的に転写因子CREBリン酸化およびFgf23発現を上昇させた。また、PTH持続投与マウス頭蓋骨でのCREBリン酸化は上昇を認めた。

【考察と結論】
 PHPT骨組織では過剰なPTHによるPKA経路の持続的な活性化を介し、FGF23は増加、DMP1は抑制される。さらに骨芽細胞におけるDmp1発現抑制は、PTHと相加的にFgf23発現を上昇させた。以上より、原発性副甲状腺機能亢進症の病態の一部として、骨組織でのDmp1発現抑制を介してFgf23発現が増加し、低リン血症が促進されることが示唆された。

永田 友貴

 私は大阪市立大学大代謝内分泌病態内科学に入局後、内分泌内科医として副甲状腺疾患や骨代謝性疾患などを中心とした多くのカルシウム代謝に関連する内分泌疾患を診療してきました。その後留学等を経て、副甲状腺疾患における骨代謝というテーマで研究成果を報告でき、非常に嬉しく思います。本領域における病態生理の考え方などについては指導医の今西康雄先生や稲葉雅章教授を始め、教室のスタッフの皆様にご指導頂き、この場をお借りして改めて感謝申し上げます。本研究が副甲状腺疾患と骨代謝の更なる病態解明に少しでも貢献できることを期待しております。(大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学・永田 友貴)