日本骨代謝学会

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klotho欠損マウスにおける骨基質石灰化異常と骨基質タンパクの局在の変化について

Altered distribution of bone matrix proteins and defective bone mineralization in klotho-deficient mice.
著者:Sasaki M, Hasegawa T, Yamada T, Hongo H, de Freitas PH, Suzuki R, Yamamoto T, Tabata C, Toyosawa S, Yamamoto T, Oda K, Li M, Inoue N, Amizuka N.
雑誌:Bone. 57(1):206-219, 2013.
  • Klotho
  • 骨細胞
  • DMP1

佐々木 宗輝

論文サマリー

Klothoタンパクは腎臓の近位尿細管においてFGFR1cとともにFGF23の受容体として機能している。骨細胞から産生されたFGF23は循環系を介して腎臓の近位尿細管に作用し、リンの再吸収を抑制するNaPiIIa/IIcならびに活性型ビタミンD3の水酸化酵素である1α−hydroxylaseを抑制することで血中のリン・カルシウム濃度を調節している。従って、klotho遺伝子に変異が生じたkl/klマウスは、klothoタンパクの欠乏によりFGF23が正常に機能できず高リン・高カルシウム血症を発症してしまう。
一方、骨細胞はFGF23の産生による血中リン・カルシウムの調節のほかに、スクレロスチン産生による骨芽細胞の抑制、骨細胞・骨細管系によるメカニカルストレスの感知、DMP1産生による骨基質の石灰化に関与している。そこで我々は、高リン・高カルシウム血症を示すkl/klマウスの骨基質と骨細胞に焦点を当てて検索を行った。
生後7週齢のkl/klマウスの脛骨を用いて未脱灰樹脂切片を作製した。von Kossa染色を行うと、石灰化骨基質だけでなく広範囲に広がる未石灰化骨基質を認め、その未石灰化骨基質に囲まれた骨小腔周囲や骨細胞は石灰化を示す像が観察された。透過型電子顕微鏡にて観察すると、骨小腔の壁から骨細胞に向かって石灰化が波及している像や骨小腔全体を覆うように石灰化が及んでいる像が認められた。特に、骨表面に活性型骨芽細胞が局在するにも関わらず、その直下には未石灰化骨基質が広がっており、未石灰化基質中に存在する骨細管は石灰化を起こしていた。
そこで我々は、リン酸カルシウム結晶に親和性の強い骨基質タンパクに注目して検索したところ、kl/klマウスにおいて、DMP1が骨小腔内部および骨細管内部に蓄積することを見出した。そこで、連続切片上でvon Kossa染色とDMP1の免疫染色を行うと、骨小腔周囲の異常石灰化部位に一致したDMP1陽性反応を確認した。ついで、immuno-gold法を用いた免疫電顕を行うと、野生型マウスでは骨小腔や骨細管の壁に沿ってDMP1が集積するのに対し、kl/klマウスでは骨小腔や骨細管の内部にDMP1が集積しており、また、骨小腔全体を覆うDMP1も認められた。
以上のことから、kl/klマウスにおいて、骨細胞から過剰に産生されたDMP1は、骨小腔や骨細管に異常な石灰を誘導するとともに、骨細胞・骨細管系の果す機能を阻害し、その結果、骨基質ミネラルの維持ができなくなったものと推測された。今後はFGF23-klotho軸の破綻とDMP1の異常産生の関係について検索を進めていきたい。

佐々木 宗輝

著者コメント

私が網塚教授の研究室の門を叩いたのは大学院生の時でした。その時は骨にとても興味があったからと言う訳ではなく、網塚教授が学内で研究に厳しいことで有名であったため、自分のことを鍛えるつもりでお世話になりました。しかし、これが一旦研究を始めると、話は全く分からず、仕事量も多い。そしてボスはいつまでたっても帰らない。だが、これが良かった。この日々をこなして?いくうちに研究に対して真摯に取り組む姿勢や考え方を身につけることができ、そして何より骨研究に対する興味が尽きない自分になっていました。また、研究を通じて様々な分野の人々で出会えたことが大きな財産になっています。これは何と言っても網塚教授のご指導があったからです。この場をお借りしてお礼を述べさせて頂きます。(北海道大学・佐々木 宗輝)