日本骨代謝学会

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テリパラチド(hPTH[1-34])の連日投与は短期間でウサギ皮質骨の多孔化と骨内膜面の幼若骨形成を誘導するが、週1回投与は生理的な皮質骨構造を維持する。

Acute development of cortical porosity and endosteal naïve bone formation from the daily but not weekly short-term administration of PTH in rabbit.
著者:Hiroshi Yamane, Aya Takakura, Yukari Shimadzu, Toshiyuki Kodama, Ji-Won Lee, Yukihiro Isogai, Toshinori Ishizuya, Ryoko Takao-Kawabata, Tadahiro Iimura
雑誌:PLoS One. 2017 Apr 10;12(4):e0175329. doi: 10.1371/journal.pone.0175329. eCollection 2017.

山根 宏志

論文サマリー

 テリパラチド(hPTH[1-34])は間歇投与により骨形成を促進し、骨密度や骨強度を増加させるアナボリック作用を持つことから、骨粗鬆症治療薬として臨床使用されている。

  一方、近年テリパラチドの投与によって皮質骨の多孔化が誘導されるとの報告が出ているが、テリパラチドの用量・投与方法がどのように皮質骨への作用に影響するかは不明である。

山根 宏志

 我々は健常ウサギにテリパラチドを異なる頻度(連日または週1回)で1週間当たりの総投与量を揃えて4週間投与し、両者の皮質骨に与える影響を比較した。テリパラチドの連日投与群では、脛骨骨幹部の皮質骨に多孔化が発生するのに対し、週1回投与では正常な骨構造が維持されていた。さらに、連日投与群では骨内膜面が海綿骨様の構造に変化し、骨内膜面に沿った骨髄に線維芽細胞様細胞の集積 (marrow fibrosis) が認められた。さらに、SHG(Second Harmonic Generation, 第二高調波発生)を用いたコラーゲン線維のイメージングにより、連日投与群の骨内膜面に形成された海綿骨様構造は、コラーゲン線維が不規則に走行する幼若な骨組織であることが明らかになった(文献1)。

 なお本実験の期間は1ヵ月と短く、いずれの投与頻度でも皮質骨の骨量増加には至っていない。このことは、連日投与による皮質骨の多孔化が1ヵ月という短期間の内に骨量増加に先行して発生することを示唆している。

 また、連日投与群では骨形成マーカーである血清中オステオカルシンおよび骨吸収マーカーである尿中デオキシピリジノリンが大きく上昇していたのに対し、週1回投与群ではこれら骨代謝マーカーの変動が緩やかであった。このことから、連日投与群における骨代謝の亢進に伴う前骨芽細胞や破骨細胞の過度な増殖・分化の亢進が、皮質骨の多孔化(皮質骨内血管周囲での骨吸収亢進)や骨内膜面の線維層形成(marrow fibrosis)に伴う幼若骨形成に関与していると考えられた。また、週1回投与では骨代謝に与える影響が比較的マイルドであるために、健常な皮質骨構造が保たれていたと考えられた。  

 

 本研究では、さらにテリパラチド投与後の血中薬物動態も解析し、用いた何れの薬用量においても、血中濃度は投与後1時間以内に最大となり、2-3時間後には定量限界以下に低下することを観察した。これらの観察により、テリパラチドによる皮質骨の多孔化と幼若骨形成は、これまで報告された血中暴露時間の長期化(文献2)のみならず、間歇投与の頻度にも依存的であることが明らかとなった。本研究の成果は、投与頻度を下げることにより、皮質骨多孔化や骨内膜面の幼若骨形成などの構造変化を回避しながら、健常な骨形成の亢進を誘導できることを示唆している。

山根 宏志

文献
1) Yamane H, Takakura A, Shimadzu Y, Kodama T, Lee JW, Isogai Y, Ishizuya T, Takao-Kawabata R, Iimura T. PLoS One. 2017 Apr 10;12(4):e0175329.
2) Frolik CA, Black EC, Cain RL, Satterwhite JH, Brown-Augsburger PL, Sato M, Hock JM. Bone. 2003 Sep;33(3):372-9.

著者コメント

 PTHは投与方法(持続投与と間歇投与、血中暴露時間の長短)により骨組織への影響が異なるというユニークな薬理作用を持っており、骨粗鬆症治療薬としての有効性を最大化するためには、その特性に対する深い理解が重要となります。本研究では、血中暴露時間の長期化のみならず、高い投与頻度(すなわち頻回投与)が、皮質骨多孔化や骨内膜面の幼若骨形成に関わることを明らかにしました。今後もテリパラチドの薬理作用の特長について、基礎・臨床研究で解明していくことで、骨粗鬆症治療の現場へのより有効な治療法の提供に貢献して参りたいと思います。
 本研究は、愛媛大学の飯村忠浩先生、李智媛先生の御指導を初めとして共著者の方々、サポートいただいた社内外の方々のご協力なくして成し得ませんでした。この場を借りて心より御礼申し上げます。(旭化成ファーマ株式会社・山根 宏志)