日本骨代謝学会

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関節リウマチでは早期から関節近傍皮質骨の骨質異常と骨脆弱性が生じる

Autoimmune arthritis deteriorates bone quantity and quality of periarticular bone in a mouse model of rheumatoid arthritis.
著者:Shimizu T, Takahata M, Kimura-Suda H, Kameda Y, Endo K, Hamano H, Hiratsuka S, Ota M, Sato D, Ito T, Todoh M, Tadano S, Iwasaki N.
雑誌:Osteoporos Int. 2017 Feb;28(2):709-718.
  • 関節リウマチ
  • 骨質
  • FTIR

清水 智弘

論文サマリー

【目的】
 関節リウマチ(RA)患者に発生する骨脆弱性には,ステロイド剤だけでなく,疾患自体が独立した因子として関与することが疫学研究により明らかとなっている.しかし,RA単独要素が骨に与える影響を臨床的に調べることはきわめて困難であり,その詳細は不明な点が多い.そこで本研究ではRAによる骨質異常と力学的特性の変化をモデルマウスを用いて調査した.

【方法】
関節炎発症モデルであるSKGマウスとそのバックグラウンドであるBalb/CAマウスを用いた.比較対称として,閉経後骨粗鬆症モデルを用いた.12週齢でBalb/CAマウスに偽手術(Sham群)または両側卵巣摘出術(OVX群)を行い, SKGマウスはマンナン腹腔内投与により関節炎を誘発した(SKG群).8週間後に安楽死させ,評価した.骨質評価には,[1]マイクロCTによる骨微細構造評価,[2]有機成分の評価に優れたフーリエ変換型赤外分光法(FTIR)および[3]無機成分の評価に優れたX線回析(XRD)による材質評価,[4]血清マーカーによる骨代謝回転の評価を行った.脛骨を用いて力学的特性を評価した.

【結果】
OVX群,SKG群ともにSham群と比較して骨吸収マーカーが上昇し,大腿骨遠位部および腰椎の海綿骨量の減少と微細構造の劣化を認めた.皮質骨では,SKG群でのみ有意に皮質骨幅が減少した.材質評価では,骨幹端中央部ではいずれのパラメータも変化しなかったが,遠位骨幹端の石灰化度とコラーゲンの配向がSKG群でのみ低下した(図).

清水 智弘

アパタイトの配向に有意差はなかった.遠位骨幹端の曲げ破壊強度・弾性率・曲げ応力・靱性はSKG群で有意に減少した.

【考察】
 閉経後骨粗鬆症やRAでは代謝回転の亢進により骨量の低下や海綿骨構造劣化が起こり海綿骨の多い部位に易骨折性が生じる.それに加えて,RAでは早期から関節近傍皮質骨の石灰化度低下やコラーゲンの配向異常などの変化が生じ,重篤な骨脆弱性をきたす可能性が示唆された.

著者コメント

 この論文は私の現在のライフワークの一つとなっている続発性骨粗鬆症に関する研究の初めての論文です。骨質の評価は非常に多種多様で, 実際の力学的特性とどれほど関与しているかは明らかではありません。定量評価の重要性は十分に理解しているつもりですが, 自分の中ではやはり拡大していない1枚の絵(Figure)に説得力があるのではないかと思っています。千歳科学技術大学の木村教授をはじめとしたスタッフとの共同研究により骨質を可視化することに長けたFTIRを用いて, リウマチの骨脆弱性のメカニズムの一部を解明できました。我々は高畑雅彦先生をPIとした北海道大学整形外科骨代謝研究グループで日々前向きに研究を続け, また北海道内の各施設とそれぞれの得意分野を持ち寄り手を取り合って, 骨のモデリングのように成長していきたいと思います。(北海道大学医学部整形外科・清水 智弘)