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サケ由来DNAは骨芽細胞の遊走性を誘導して骨再生を促進する

Salmon DNA Accelerates Bone Regeneration by Inducing Osteoblast Migration.
著者:Sato A, Kajiya H, Mori N, Sato H, Fukushima T, Kido H, Ohno J.
雑誌:PLoS One. 2017 Jan 6;12(1):e0169522.
  • DNA
  • 骨再生医療
  • 骨分化

大野 純・佐藤 絢子

論文サマリー

 骨再生療法では、骨欠損部への骨形成細胞の遊走が必須である。本研究はサケ白子由来DNA(マルハニチロ株式会社より提供)を用いたスキャフォールド(DNAディスク)が、骨形成細胞の遊走および骨分化誘導の促進に関与する可能性をin vitro, in vivo実験にて検討した。

 DNAの細胞および組織への影響を検討するために、ヒト骨芽細胞様細胞(MG63)を用いて細胞増殖試験およびラット皮下へのDNAディスク埋入による生体親和性試験を行った。その結果、DNA濃度と細胞増殖に因果関係は得られず、ラット皮下に埋入されたDNAディスクは埋入後1週後には完全に吸収された。DNAは細胞および組織に対して良好な親和性を示すことを確認した。また、MG63細胞をDNA非含有(OIM群)およびDNA含有骨分化誘導培地(DNA群)で培養した結果、DNA群において骨関連遺伝子・タンパク(Runx2,ALP,Osterix)の発現が有意に亢進した。免疫細胞染色およびALP染色においても同様の結果が得られ、DNAが骨分化誘導を促進させることが示唆された。

 骨再生過程におけるDNAの細胞遊走能を検索するために、MG63細胞を用いて、トランズウェル法にて細胞遊走性を評価した。その結果、DNA含有培地では、MG63細胞の遊走性が亢進した。さらに、ラット頭蓋骨欠損モデル(CDM)にDNAディスクを埋入し、修復初期段階の欠損部置換組織での免疫組織染色を行った。欠損部修復組織には幹細胞マーカー(ALDH1)および骨分化関連マーカー(Osterix)を発現する細胞の存在が認められ、DNAが骨形成関連細胞群の遊走性に関与することが明らかとなった。

DNAディスクの骨再生能を評価するために、CDMにDNAディスクを埋入したDNA群、試料を埋入しないBlank群およびコラーゲン材料を埋入したControl群による骨欠損モデル実験を行った。継時的にマイクロCTおよび組織標本による検討を行った結果、DNA群は、Blank群およびControl群と比較して術後2,3か月において有意に新生骨の形成を示し、骨再生・修復を促進させることが明らかとなった。以上の結果から、DNAは、骨欠損部で骨再生に必要な骨形成細胞の遊走を促し、骨分化誘導を促進させることにより、良好な骨再生・修復を誘導することが示唆された。(福岡歯科大学・再生医学研究センター・大野 純)

大野 純・佐藤 絢子

大野 純・佐藤 絢子

著者コメント

 大学院1年生次に大野純教授より、福岡歯科大学・再生医学研究センター研究室へのお誘いをいただき、骨再生の研究を始めることとなりました。研究を進める上で一番苦労したことは、DNAの細胞遊走性を検証することです。試行錯誤しながら、トランズウェル法や組織標本を用いて検討し、結果を得ることができました。なかなか思うように進まないこともありましたが、多くの先生方、大学院の先輩や後輩の皆様の協力のおかげで本研究をまとめることができ、また、研究の楽しさを教えていただきました。ご指導いただきました福島忠男前教授、大野純教授、城戸寛史教授はじめ多くの先生方に心から感謝申し上げます。(福岡歯科大学咬合修復学講座口腔インプラント学分野・佐藤 絢子)