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テリパラチド連日製剤におけるNonresponderの特徴

A retrospective analysis of nonresponse to daily teriparatide treatment.
著者:Rui Niimi, Toshibumi Kono, Atsushi Nishihara, Toshihiko Kono, Akihiro Sudo
雑誌:Osteoporos Int. 2016 Sep;27(9):2845-53.
  • 骨粗鬆症
  • テリパラチド
  • 骨密度

新美 塁

論文サマリー

 骨粗鬆症治療において薬物治療に対して反応の少ない、あるいは反応がないNonresponderの存在が知られている。テリパラチド連日製剤におけるNonresponderの報告は少なく、Nonresponderの背景は知られていない。そこで、われわれはテリパラチド連日製剤に対するNonresponderの特徴を検討した。

 対象は、テリパラチド治療を開始した631例中、24ヵ月の治療を終了した354例である。本研究では、4ヵ月ごとに骨密度検査を行い、24ヵ月時の腰椎BMD 増加率が3%未満の症例を主のNonresponderと定義した(Gallagher JC, et al. Bone 2006)。追加解析として、24ヵ月でのNonresponderを対象に、20ヵ月の時点での腰椎BMD 増加率も検討した。さらに20ヵ月と24ヵ月での腰椎BMD 増加率がいずれも3%未満の症例では、治療開始1ヵ月あるいは4ヵ月での血清P1NPの変化も調査した。Nonresponderに関係する因子を単変量及び多変量解析を用いて評価した。統計解析にはSpearmanの順位相関係数、Mann-Whitney U検定、重回帰分析などを用い、有意水準を5%とした。354例中、24ヵ月の治療終了時のNonresponderは42例(12%)であった。年齢、性別、BMI、体表面積、治療開始時腰椎BMD、治療開始時P1NP、治療開始時血清カルシウム等を因子として単変量解析を行ったところ、腰椎BMDのNonresponderに関係する因子は、ビスホスホネート製剤先行投与、治療開始時血清P1NP・尿中NTX低値、治療開始早期のP1NP増加量低値であった。しかし、ロジスティック回帰分析では、これらの因子とNonresponderに有意な関係があるとはいえなかった。これらの因子は治療効果に影響があると繰り返し報告されているため、重回帰分析により、腰椎BMD増加率と単変量解析で抽出された因子に関係がないか評価を行うと、単変量解析で有意な関係が認められた因子全てが、腰椎BMD増加率に関係していた。つまり、ビスホスホネート製剤先行投与、治療開始時血清P1NP・尿中NTX低値、治療開始早期のPINP増加量低値は腰椎BMD増加率と関係しているものの、Nonresponderを決定付けるほど強い関連性がないことが示唆された。更に、24ヵ月治療でのNonresponderを対象に、その直前に骨密度測定を行った20ヵ月での評価を追加検討すると、34例(81%)はNonresponderではなかった。治療開始1ヵ月、または4ヵ月での血清P1NPの増加量は平均98µg/L (-69〜740µg/L)であった。腰椎BMDでのNonresponder8例を対象に検討しても、全症例が治療早期にP1NPが10 μg/Lより増加し、Nonresponderとは言い難かった。これら全ての項目で反応が見られない真のNonresponderは存在しなかった。結論:テリパラチド連日製剤の24ヵ月のNonresponderは、ビスホスホネート製剤先行投与、治療開始時血清P1NP・尿中NTX低値、治療開始早期のPINP増加量低値が関係しているが、その関係の強固さはNonresponderを決定付けるものではなかった。また、Nonresponderの定義を拡張すると、Nonresponderは存在しなかった。

著者コメント

 テリパラチド連日製剤は、腰椎骨密度増加効果が高く、骨代謝マーカーも治療早期に増加がみられる薬剤です。Nonresponderの臨床像についてはあまり検討されていませんでした。Nonresponderについての情報は臨床的に重要なため検討しました。
 初回投稿時には、過去の報告が12ヵ月での検討であったことや、症例数を増やし検討したかったこともあり12ヵ月での検討を行っていました。しかし、査読過程で24ヵ月に経過観察期間を延長した上、20ヵ月での評価を追加するように求められました。論文作成の過程では、査読者の指摘・アドバイスをどのように生かすかが大切であることは言うまでもありません。時には査読者の提案を断ることもありますが、査読者のアドバイスにより、この論文が良い論文になっていると感じながらデータを再解析し、本文や図表を全面的に作り直しました。その点が苦労というか時間を要した点です。しかし、こうしてFirst authorに取り上げて頂くことも出来、論文が採用されて良かったと思います。
 最後になりましたが、私の所属する富田浜病院の研究メンバーと三重大学の湏藤教授に、この場を借りて特に御礼申し上げます。(富田浜病院・新美 塁)