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IL-17はヒト間葉系幹細胞の軟骨細胞分化を阻害する

IL-17 inhibits chondrogenic differentiation of human mesenchymal stem cells
著者:Kondo M, Yamaoka K, Sonomoto K, Fukuyo S, Oshita K, Okada Y, Tanaka Y.
雑誌:PLoS One. 2013 Nov 15;8(11):e79463
  • 間葉系幹細胞
  • 軟骨細胞分化
  • 炎症性サイトカイン

近藤 真弘

論文サマリー

間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有しており、軟骨細胞を含む様々な細胞に分化可能である。MSCは軟骨組織中にも存在することから、軟骨の恒常性維持に関与すると考えられるとともに、軟骨再生を志向した細胞治療のツールとしても期待されている。IL-17は慢性炎症のキーサイトカインの一つとして注目を集めており、関節リウマチ(RA)の病態に寄与することが知られている。軟骨に着目すると、IL-17は、軟骨基質の分解や軟骨細胞のアポトーシスを誘導することにより軟骨破壊に寄与することは知られているが、軟骨細胞の分化に対する影響は不明である。そこで、ヒト骨髄由来MSCをTGF-β3含有培地でペレット培養する軟骨細胞分化誘導系を用いて、IL-17の作用を評価した。ペレット培養による軟骨細胞分化誘導により、軟骨基質であるプロテオグリカンとII型コラーゲンの蓄積が認められるが、培地中にIL-17を添加することにより阻害された。また、軟骨マーカー遺伝子であるAggrecan, Col2a1, Col10a1およびALPの発現は、IL-17添加により阻害された。これらの結果より、IL-17はMSCの軟骨細胞分化を抑制することが明らかとなった。次に、IL-17の軟骨細胞分化阻害メカニズムを解明するため、軟骨細胞分化のマスター転写因子であるSox9に着目した解析を行った。IL-17はSox9の発現レベル自体には影響は与えないが、Sox9の転写活性化に重要なリン酸化のレベルを低下させた。また,Sox9をリン酸化するprotein kinase A (PKA)は、軟骨細胞分化の過程で活性化されるが、IL-17により抑制された。PKA阻害薬であるH89は、MSCの軟骨細胞分化を顕著に抑制することが確認された。以上の結果から、PKAによるSox9の活性化はMSCの軟骨細胞分化に重要であり、IL-17はこれらの活性抑制を介して軟骨細胞分化を阻害することが明らかになった。このことは、IL-17による軟骨細胞分化抑制作用は、軟骨の恒常性破綻を引き起こし、軟骨破壊に寄与することが示唆されることから、抗IL-17抗体等によるIL-17抑制治療は軟骨の自己修復能の回復に結び付く可能性が考えられた。また、MSCを用いた軟骨再生治療の臨床応用を考える際には、施術前に滑液中のIL-17活性を抑制しておくことが、効率的な軟骨再生に重要であると考えられた。

近藤 真弘

近藤 真弘

著者コメント

私は、田辺三菱製薬薬理第一研究所より産業医科大学に派遣され、「間葉系幹細胞」や「軟骨」に関して、予備知識が全くない状況で研究をスタートしました。さらに、産業医科大学第1内科では、MSCの軟骨細胞分化に関する研究に着手したばかりであったため、アッセイ系の構築からのスタートとなり、系の構築に長い時間を費やしました。それでも、このような研究成果を得ることができたのは、田中良哉先生をはじめとするラボのメンバーによる的確なsuggestionと有意義なdiscussionのおかげであり、心から感謝しております。今後、本研究を深化させることにより、RAやOAなどの軟骨破壊性疾患の病態解明と新たな治療法の開発に繋げられるよう、研究を継続したいと考えています。(産業医科大学第1内科・近藤 真弘)

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