日本骨代謝学会

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60歳以上の日本人女性における自己申告の身長低下および亀背と椎体骨折との関係の横断的評価

Associations of self-reported height loss and kyphosis with vertebral fractures in Japanese women 60 years and older: a cross-sectional survey.
著者:Kamimura M, Nakamura Y, Sugino N, Uchiyama S, Komatsu M, Ikegami S, Kato H, Taguchi A.
雑誌:Sci Rep. 2016 Jul 6;6:29199. doi: 10.1038/srep29199.
  • 亀背
  • 椎体骨折
  • スクリーニング

田口 明

論文サマリー

側面エックス線写真上で椎体骨折と判定される患者の大半は腰痛等の症状を有さない。高い有病率にも関わらず多くの椎体骨折は診断されないままである。一方で症状の有無に関わらず、次の椎体骨折のリスクは増加する。このために多くの研究者達が簡便なスクリーニング指標を考えてきた。多くの患者がいる場合、簡便なスクリーニング指標で疑わしいと思われた場合は、無症状であっても側面エックス線写真を取る必要がある。椎体骨折があれば身長は低下しまた腰も曲がることから、身長低下や亀背と椎体骨折との関連が検討されてきた。しかしながら特に亀背について、患者本人が感じる自己申告の亀背が椎体骨折の指標となるか否かについての検証はこれまでになかった。本横断研究では自己申告の身長低下および亀背と椎体骨折との関連について検討を行った。対象は2014年6~8月に整形外科クリニックを受診した60歳以上の男女691名のうち、インフォームドコンセントが得られ、除外診断基準者を除いた60~92歳の407名の女性とした。症例数が少ない男性は検討から除外した。主要アウトカムは側面エックス線写真で半定量的評価法(Semiquantitative Method:SQ 法)によって診断された椎体骨折とした。自己申告の亀背は次の3つに分類した。すなわち、亀背なし、軽度~中等度の亀背および重度の亀背である。自己申告の身長低下は、若年時からの身長低下が4cm未満および4cm以上とした。144名(35.4%)の女性がSQ1骨折を有していた。127名(31.2%)の女性がSQ2以上の骨折を有していた。年齢、身長(現在)、体重、喫煙歴、糖尿病歴、ステロイド使用歴、リウマチ罹患歴および骨粗鬆症治療薬使用歴を補正した重回帰分析では、SQ1骨折数と有意に関連するのは自己申告の亀背と年齢のみであった。SQ2以上の骨折数と有意に関連するのは、自己申告の亀背、身長低下分類、骨粗鬆症治療薬使用歴、身長およびステロイド使用歴であった。共変量を補正したロジスティック回帰分析では、軽度~中等度の亀背および重度の亀背を感じる女性が椎体骨折を有するオッズ比は各々2.1 (95%信頼区間 [CI]、1.4~3.3)および4.2 (95% CI、1.8~9.5)であった。身長低下が4cm以上の女性が椎体骨折を有するオッズ比は2.3 (95% CI、1.4~3.7)であった。いくつかの研究における限界はあるが、自己申告の亀背の有無は60歳以上の無症状の日本人女性の椎体骨折をスクリーニングするのに有用かもしれないことが示された。

田口 明

著者コメント

骨粗鬆症患者では歯周病が増悪し歯の喪失リスクが高くなることは世界的に知られています。一方で我々の最近の検討では、自己申告の亀背の有無と喪失総歯数および過去1年の喪失歯数とが有意に関係していることが判りました。両者を鑑みた場合、簡便な自己申告による亀背の指標でも骨粗鬆症性椎体骨折をスクリーニングできるのではないかというのが本研究のスタートでした。症状は有していなくても1つの椎体骨折は次の骨折のリスクを上げるため、実臨床現場での1つのスクリーニング法として使用頂ければと思います。(松本歯科大学歯科放射線学講座・田口 明)