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膜性骨化におけるRunx2の遺伝学的解析

Genetic analysis of Runx2 function during intramembranous ossification.
著者:Takeshi Takarada, Ryota Nakazato, Azusa Tsuchikane, Koichi Fujikawa, Takashi Iezaki, Yukio Yoneda, Eiichi Hinoi
雑誌:Development. 2016 Jan 15;143(2):211-8. doi: 10.1242/dev.128793. Epub 2015 Dec 10.
  • Runx2
  • Prx1
  • MSC

宝田 剛志

論文サマリー

Runt-related transcription factor-2 (Runx2)は、間葉系幹細胞から骨芽細胞分化への必須の転写制御因子として知られている。特に、1997年に報告されたRunx2全身欠損マウスの解析結果は、これを証拠づけるものであろう。しかしながら、Runx2全身欠損マウスが、生後間もなく死亡するため、Runx2の成体での機能については未解明な部分が多い。また、全身欠損マウスでは、細胞腫特異的な解析には不向きである。本研究では、以前に我々が作製したCre/loxPシステムを使用したRunx2 conditional欠損マウスを利用し、どのような細胞がどのような系譜をたどることで、Runx2が膜性骨化において必須の役割を果たすのかを検討した。α1(I)-collagen-Cre;Runx2flox/floxマウスでは、膜性/内軟骨性骨化の著明な異常は認められていないため、より未成熟な段階での細胞に発現するRunx2が骨化過程に重要であると考え、Prx1に注目した。Prx1-Cre;Runx2flox/floxマウスの骨格標本を作製し解析したところ、膜性骨化の障害が確認された。次に、Prx1-GFPマウス頭蓋骨より細胞を回収し、Flow cytometry法により解析しところ、Prx1-GFP+細胞の中でもPrx1+Sca1+細胞が、各種MSCマーカー(CD51、CD61、CD90、CD105、PDGFRα)を発現し、高いCFU-Fと、骨芽細胞および脂肪細胞への多分化能を示すことが明らかとなった。一方、Prx1+Sca1-細胞では、CFU-Fはほとんど認められず、骨芽細胞への分化能は認められたが、脂肪細胞への分化能は認められなかった。骨芽細胞分化系列においてRunx2がどの分化段階まで重要であるかを検討する目的で、骨芽細胞前駆細胞マーカーであるOsterixに着目し、Osterix-Cre;Runx2flox/floxマウスを作製した。その結果、Osterix-Cre;Runx2flox/floxマウスにおいても同様に、顕著な膜性骨化の障害が確認された。以上の結果より、膜性骨化での骨芽細胞分化系譜においてRunx2は、Prx1+Sca1+共陽性細胞から、それに由来するOsterix陽性骨芽細胞前駆細胞の段階において機能的に重要である可能性が示唆される。

宝田 剛志

著者コメント

Type I collagen-Creを使用してRunx2を欠損させた際に、膜性骨化や内軟骨性骨化に著明な変化が出ないことから、やはりRunx2が骨形成に必須な役割を果たすのは、MSCから骨芽細胞へのコミットメントの段階なのだと感じ、それを証明したいと考え進めたのが、今回の研究の始まりでした。研究を進めることで、骨形成を担うMSCを細胞生物学的に個体レベルで特徴づけすることもできました。この情報は、骨組織の機能修復を考えた際の移植再生医療において、MSCだけではなく、iPS/ES細胞を使用した際の適切な分化誘導技術を確立する際の指標にもなるのではないかと期待している次第です。
私は、学生時代より米田幸雄先生・檜井栄一先生の下で研究活動を実施させていただき、Runx2 conditional欠損マウスの開発研究に従事させていただく機会を得ました。α1(II)-Cre;Runx2floxマウスの骨格標本を作製し、内軟骨性骨化が障害されている標本を見た時、これまでのRunx2研究の流れの糸を自分自身も繋いでいるような、生命科学の尊さに触れたような、そんな感慨深い気持ちになりました。研究成果をまとめる上では多数の方々に協力していただき、このような形で成果を発表することができました。この感謝の気持ちを忘れず、これからも研究成果を世界に発信させていけたらと思っています。(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科組織機能修復学分野・宝田 剛志)