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補体制御因子CTRP6は関節炎に対して治療効果を有する

CTRP6 is an endogenous complement regulator that can effectively treat induced arthritis
著者:Masanori A. Murayama, Shigeru Kakuta, Asuka Inoue, Naoto Umeda, Tomo Yonezawa, Takumi Maruhashi, Koichiro Tateishi, Harumichi Ishigame, Rikio Yabe, Satoshi Ikeda, Akimasa Seno, Hsi-Hua Chi, Yuriko Hashiguchi, Riho Kurata, Takuya Tada, Sachiko Kubo, Nozomi Sato, Yang Liu, Masahira Hattori, Shinobu Saijo, Misao Matsushita, Teizo Fujita15, Takayuki Sumida and Yoichiro Iwakura
雑誌:Nature Communications, 6, 8483, 2015
  • CTRP6
  • 補体

村山 正承

論文サマリー

 補体系(Complement system)は病原体に対する生体防御の1つであり、連鎖的な活性化経路である。補体系の活性化は炎症性疾患の発症に関与することが示唆されている。関節リウマチ(Rheumatoid arthritis;RA)は関節の変形や骨破壊を主徴とする自己免疫疾患であり、RA患者では補体活性化成分であるC3aやC5aの濃度が増加していることが知られている。また、RAモデルマウスを用いた解析から補体経路の活性化が関節炎の発症に重要であることが示されている。本論文にて、CTRP6(遺伝子名;C1qtnf6)が補体制御因子であることを明らかにすると共に、関節炎に対する治療効果を有することを報告した。

 C1qtnf6はRAモデルマウスの関節病理部において発現が亢進していた遺伝子であり、補体C1qに類似したCTRP6をコードする。しかし、補体系における役割や関節炎発症における役割は明らかではなかった。そこでまずC1qtnf6遺伝子を欠損したマウス(C1qtnf6 KOマウス)および過剰発現したマウス(C1qtnf6 Tgマウス)を作製し、RAの実験モデルであるコラーゲン誘導関節炎を実施した。その結果、野生型マウスに比べC1qtnf6 KOマウスは関節炎が増悪化した一方、C1qtnf6 Tgマウスは関節炎が軽減した。また、関節炎を誘導したC1qtnf6 KOマウスではC3aおよびC5a量の増加が見られた。補体系には3つの異なる活性化経路が存在するが、いずれもC3転換酵素を生じることでC3からC3aおよびC3bを生成させる。それぞれの経路におけるCTRP6の影響を検討した結果、CTRP6は第二経路の活性化を特異的に制御していた。補体第二経路は、C3が水分子により活性化したC3(H2O)とB因子が結合することで活性化が開始するが、CTRP6はB因子と競合的にC3(H2O)と結合することで活性化を阻害していた。また、CTRP6はRAモデルマウスだけでなくRA患者でも発現が亢進し、炎症性刺激により滑膜細胞から分泌されることも明らかになった。最後に、関節炎に対するCTRP6の治療効果について検討した。その結果、関節炎を誘導したマウスへ組換え体CTRP6を投与することで関節炎が治癒した。以上の結果より、我々が同定した新たな補体制御因子CTRP6は関節炎に対する新たな治療薬として有用であることが示唆された。

村山 正承
村山 正承

著者コメント

 私は修士課程より東大医科研(当時)の岩倉洋一郎先生のご指導のもと関節リウマチの発症機構の解明をさせて頂いております。岩倉先生が東京理科大生命研に移動された今でも引き続きCTRP6の解析を行う機会を頂きまして、この論文を完成させることが出来ました。CTRP6が関節炎に対し劇的な治療効果を持つことが明らかになり、現在は臨床応用に向けた基盤研究をさせて頂いています。まだまだ乗り越えるべき課題は多いですが、新たな治療法の開発のために今後も研究に邁進していきたいと思います。この場をお借りして、お世話になりました岩倉先生をはじめ研究室の皆様、共同研究者の皆様に厚く御礼申し上げます。(東京理科大学生命医科学研究所・村山 正承)