日本骨代謝学会

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アレンドロネートはラット再植モデルにおいて、骨芽細胞のプレニル化抑制を介し骨形成を促進する

Alendronate promotes bone formation by inhibiting protein prenylation in osteoblasts in rat tooth replantation model.
著者:Komatsu K1, Shimada A, Shibata T, Wada S, Ideno H, Nakashima K, Amizuka N, Noda M, Nifuji A.
雑誌:J Endocrinol. 2013 Oct 4;219(2):145-58.
  • ビスホスホネート
  • 骨形成
  • 骨芽細胞

二藤 彰

論文サマリー

ビスホスホネート(BP)はその強力な骨吸収抑制活性から、骨粗鬆症をはじめとする多くの骨関連疾患に多用されている薬剤である。一方、顎骨壊死のような当初予想もしなかった重篤な副作用が起こりうることから、作用メカニズムを明らかにすることの重要性が指摘されている。我々はラット臼歯の再植モデルにおいて、抜歯した臼歯をBPに短時間(5分間)作用させてから再び抜歯窩に再植すると、2週後には歯槽骨の有意な骨量増大を見いだした。骨形成を評価する動的ならびに静的パラメーターが増加したので、骨吸収抑制のみならず、骨芽細胞活性化により骨形成の増加が起こると推察された。本研究ではそれを実験的に検証するために、in vitroとin vivoの両面から、1)BPが骨芽細胞に取り込まれるのか、その仕組みはどのようになっているか 2)BPが骨芽細胞に対して直接影響を与えるか、その仕組みはどのようになっているか、について検討した。まずBPによる取り込みを調べる目的でアレンドロネート(ALN)に、蛍光物質Fluorescein(F)を付加したF-ALNを作成し、F-ALNの骨芽細胞への取込みと局在を調べた。蛍光標識されたALNは、in vitroで初代培養骨芽細胞に濃度依存的に取り込まれており、in vivoでは骨表面近くの間葉系細胞に取り込まれていた。clathrin依存性エンドサイトーシスの阻害剤を同時に作用させると、細胞内取り込みが抑制されるだけでなく、ALNによる骨量増大やALP陽性細胞の増加も抑制されたことから、ALNの効果はclathrin依存性のエンドサイトーシス経路を介することが示唆された。また in vitroでALNは骨芽細胞のオステオカルシン発現と石灰化を促進した。 さらに、ALNは 骨芽細胞でのERKのリン酸化を抑制し、又Rap1のプレニル化を抑制したが、clathrin依存性エンドサイトーシス阻害剤は、後者の効果のみを阻止した。これらの結果から、ALNによる骨形成の促進には骨芽細胞でのclathrin依存性エンドサイトーシス、それに引き続くプレニル化の抑制が関与している可能性が示唆された。これらの結果は、BPが骨芽細胞を介した骨形成にポジティブな直接効果をもたらすことを示すものであり、あらたなBP応用の可能性を広げるものと考えられる。

二藤 彰

著者コメント

抜いた歯を抜歯窩に戻す再植術は、歯科臨床で用いられる技術ですが、その生物学的バックグラウンドはあまり明らかではありません。例えば、その際に歯の骨性癒着が起こり得る理由、またそこでの歯槽骨と歯、歯周組織の相互作用もわかっていません。私たちは齧歯類の再植モデルを作成し、それらの課題にチャレンジしたいと思っています。前者については歯にBP処理をごく短時間行うことで、実験モデルにおける骨性癒着を防ぐことができる事を見いだしました。より注意深く観察したところ、癒着を抑えるのみならず、周囲の骨量が増えており、それは破骨細胞の活性化を抑えるということだけでは説明つかず、BPが破骨細胞以外に直接ターゲットとなる細胞がいるのではないか、と考え本研究を行いました。まだまだ不十分な点が多いですが、私たちはマウスレベルで解析可能な再植モデルを確立できたと思っており、このモデルを用いて歯槽骨と歯、歯周組織で起きている生物学的相互作用を知りたいと思っています。また本研究が歯科臨床で最近耳にするBPへの過剰な先入観も少しは払拭できたら嬉しいと思います。(鶴見大学・二藤 彰)