日本骨代謝学会

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PTH(1-34)は骨芽細胞においてグルココルチコイドによるIL-11の発現抑制を阻害する:
グルココルチコイド過剰に対する骨芽細胞分化促進のメカニズム

Parathyroid hormone (1-34) counteracts the suppression of interleukin-11 expression by glucocorticoid in murine osteoblasts: a possible mechanism for stimulating osteoblast differentiation against glucocorticoid excess.
著者:Kuriwaka-Kido R, Kido S, Miyatani Y, Ito Y, Kondo T, Omatsu T, Dong B, Endo I, Miyamoto K, Matsumoto T.
雑誌:Endocrinology. 2013 Mar;154(3):1156-67.
  • PTH(1-34)
  • グルココルチコイド
  • IL-11

木戸 里佳

論文サマリー

グルココルチコイド(GC)過剰は骨形成低下に基づく骨量減少をもたらす。一方で間欠的PTH(1-34)投与は骨形成を促進し、GC過剰による骨形成低下を抑制する。我々はこれまでに、力学的負荷がΔFosBの発現誘導とPKCδ依存的なSmad1のリン酸化を介してIL-11遺伝子の転写を促進し、IL-11がDkk1, 2の発現抑制を介してWntシグナルを活性化することを示し、力学的負荷が骨芽細胞分化および骨形成に及ぼす作用の一部をIL-11が担うことを明らかにしてきた。そこで本研究では、骨芽細胞におけるIL-11発現に対するPTH(1-34)およびGCの作用について検討した。

その結果、PTH(1-34)は力学的負荷と同様に、骨芽細胞においてΔFosBの発現およびSmad1のリン酸化を促進し、ΔFosBとSmad1が協調的にIL-11遺伝子の転写を促進することが明らかになった。PKCδ欠損マウス由来の骨芽細胞においてはPTH(1-34)によるSmad1リン酸化は認められず、PTH(1-34)によるSmad1リン酸化がPKCδを介することも示された。一方でGCは、ΔFosBの発現およびSmad1のリン酸化に作用することなく、PTH(1-34)によるIL-11遺伝子の転写促進を抑制することが明らかになった。
高用量のPTH(1-34)はGCによってもたらされる骨芽細胞のアポトーシスを抑制するが、このPTH(1-34)の作用はIL-11中和抗体あるいはIL-11 siRNAによって相殺された。さらにΔFosBがJunDとヘテロダイマーを形成し、さらにJunDにSmad1が結合してIL-11遺伝子上で複合体を形成することを我々は過去に確認していたが、GCとその受容体(GR)から成る複合体がIL-11遺伝子上でJunDに結合することが本研究において確認された。

以上の結果より、PTH(1-34)が力学的負荷と同様にIL-11を介して骨芽細胞分化を促進すること、さらにPTH(1-34)およびGCによる骨芽細胞の分化およびアポトーシスの制御はIL-11を介する相互作用であることが明らかになった。

著者コメント

大学院入学を機に、松本先生の下、力学的負荷による骨芽細胞分化の促進機序を主要テーマとして、骨代謝研究に従事するようになりました。
初めて足を踏み入れる基礎研究の世界でさまざまな壁にぶち当たりながら、多くの貴重な経験を積み重ねていくなかで、力学的負荷によるIL-11を介する骨芽細胞分化の促進機序、Smadとの相互作用、PTHおよびGCによる作用(本研究)と、いくつかの成果をあげることができました。
基礎研究の世界では目に見える成果を上げていくことは容易なことではなく、地道な努力と強い忍耐力を要求されますが、これまでの経験は私自身の貴重な財産であり、このような機会に恵まれたことに深く感謝しております。(八尾市立病院内科・木戸里佳)