日本骨代謝学会

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In vitro再構築系と2光子励起顕微鏡を用いた骨モデリングとリモデリングの解析

Analyses of bone modeling and remodeling using in vitro reconstitution system with two-photon microscopy
著者:Hikita A, Iimura T, Oshima Y, Saitou T, Yamamoto S, Imamura T.
雑誌:Bone. 2015 Mar 12;76:5-17.
  • In vitro再構築系
  • 骨リモデリング
  • 2光子励起顕微鏡

疋田 温彦

論文サマリー

骨モデリングおよびリモデリング過程において、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞といった骨代謝関連細胞は、細胞間および細胞外基質との相互作用により、時間経過と共にその形態、位置、活性を大きく変化させると考えられている。しかし、この様な細胞イベントの詳細や、その根底に存在するメカニズムは十分に解明されていない。そのため、骨代謝関連細胞間ネットワークおよび細胞外基質により構成される微小環境を、時空間的に細胞レベルで解析するシステムが必要とされている。
筆者らは、石灰化基質に存在する破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞からなる細胞間ネットワークをin vitroにおいて再構築し、2光子励起顕微鏡を用いて同一部位を経時的に観察することにより、骨モデリングやリモデリングといった現象を再現し、解析可能な新規システムを構築した。このシステムを用いて、石灰化基質の形成とともに立方型の骨芽細胞が扁平化する様子を観察し、またこの現象を画像解析により定量化することができた。さらに、破骨細胞による吸収窩への骨芽細胞の動員と、新規に形成された基質による再充填が観察され、リモデリングの生じる頻度と基質体積の変化が定量的に示された。また、このリモデリング過程において、扁平な骨芽細胞が吸収窩へと動員され、立方型の骨芽細胞に変化した後に、自らの産生した基質に埋まっていく様子が観察された。
このように、我々が開発した新規システムを用いることにより、骨吸収と骨形成のカップリングをはじめとする現象をin vitroで再現し、細胞の動態を経時的に観察、定量化することが可能であった。このシステムはin vitro培養系であるため、遺伝子変異や薬剤投与と言った介入が容易であり、細胞イベントの根底に存在する分子メカニズムの解明にも応用可能であると考えられる。

疋田 温彦
図1:破骨細胞(赤)による基質吸収窩における、骨芽細胞(緑)の活性化と基質(青)の再充填となります。

著者コメント

この系で観察された現象が本当にin vivoの事象を再現しているのか、という問いに答えられるだけのエビデンスは持ち合わせておりません。しかし、破骨細胞による吸収窩が特異的に埋まっていく様子は、あたかもいくつかの先行文献で見られる、骨リモデリング過程についての予想図を見ているかのようです。我々はこの系がカップリング機構を内包し、そのメカニズムの解明に有用であると考えており、さらなる解析を進めて行く予定です。
この研究テーマは始めから計画していたわけではなく、骨芽細胞の動態を2光子励起顕微鏡で観察しようと試みていたときに、石灰化基質内のlacuna様の構造が気になり、観察を始めたのがスタートでした。研究を進める際には骨代謝、光学、数理解析の専門家のサポートを受けることができました。共著者の先生方をはじめとする皆様には大変お世話になりました。また、このような様々な分野の研究者がいて、2光子励起顕微鏡があり、自由に研究をさせてもらえる環境を与えて頂いた今村健志先生に深く感謝致します。(愛媛大学・疋田 温彦)