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破骨細胞形成抑制ペプチドが皮質骨形成を促進する

Stimulation of Bone Formation in Cortical Bone of Mice Treated with a Receptor Activator of Nuclear Factor-kB Ligand (RANKL)-binding Peptide That Possesses Osteoclastogenesis Inhibitory Activity.
著者:Furuya Y, Inagaki A, Kahn M, Mori K, Penninger JM, Nakamura M, Udagawa N, Aoki K, Ohya K, Uchida K, and Yasuda H.
雑誌:J. Biol. Chem. 2013, Feb 22; 288 (8): 5562-5571.
  • RANKL
  • 骨形成
  • 機能性ペプチド

古屋 優里子

論文サマリー

破骨細胞と骨芽細胞の相互作用により骨の恒常性は維持されているが、間葉系幹細胞に由来する骨芽細胞の増殖や分化、さらにはin vivoにおける骨形成のメカニズムについてまだ未解明な部分が多い。 RANKL-RANKシグナルを阻害するペプチド(W9)は、9個のアミノ酸から成る環状型ペプチドで、元々はTNF-αアンタゴニストとして開発されたが、RANKの一部と似た配列を持つことから破骨細胞形成を抑制することが報告されている。本研究において我々は、このW9ペプチドが、骨芽細胞の石灰化を促進し、in vivoにおいては皮質骨の骨形成を促進する作用を有することを見出した。

古屋 優里子

まず、W9ペプチドを5日間正常マウスに皮下投与すると、大腿骨の皮質骨部分において骨形成率が上昇し、骨密度が有意に増加することがわかった。一方、遠位骨端では破骨細胞数は減少したものの、海綿骨密度の有意な上昇は見られなかった。そこで、W9の骨形成能をin vitroで検討したところ、W9はマウス骨芽前駆細胞MC3T3-E1及びヒト間葉系幹細胞に対してALP活性亢進及び石灰化を誘導することが示された。一方、W9はマウス骨髄細胞からのRANKL誘導性の破骨細胞形成を抑制したが、TNF-αアンタゴニストとしての作用は確認できなかった。
次に、W9の骨芽細胞分化に関わるシグナルを解析した結果、p38及びBMPシグナルであるsmad1/5/8が関与していることが判明した。W9はin vitro及び異所骨形成の系においてBMP-2と相乗的に作用することも確認できた。また、sBMPR-1A及びBMP-2/4中和抗体を添加すると、W9によるALP活性亢進を部分的に抑制することができた。
さらに、間葉系幹細胞や骨芽前駆細胞にはRANKLがわずかに発現しているが、これらの細胞上のRANKLにW9が結合することで骨形成作用が誘導される可能性を考えた。RANKLノックダウン及びRANKL欠損マウスの骨芽細胞を用いてW9の作用を検討したところ、ALP活性の低下が確認できた。

以上の結果からW9は骨疾患の治療薬として有望であるが、その興味深いメカニズムとしてW9が骨芽細胞上のRANKLに結合して骨形成シグナルを伝えると共に、骨芽細胞からBMPなどのサイトカイン分泌を促して、そのシグナルを強める可能性が示唆された。今後、骨芽細胞分化シグナルの一つとしてW9による骨形成メカニズムの解明が進むことを期待している。

古屋 優里子

著者コメント

新しい勤務先に来て、最初に行ったのは骨芽前駆細胞を用いた細胞分化誘導系の確立でした。それまでの研究は骨とは無縁でしたので、黙々と実験系を確立していましたが、この中でW9ペプチドをネガティブコントロールとして使用していました。
偶然にもW9の骨形成作用を見つけた時は、自分の手技の問題と考え、何度もやり直し実験を行いました。何度やっても結果が変わらなかったので、海外出張中の上司に第一報を入れようとメールを書きました。ただ、どのように説明すればよいか、迷った挙句に「破骨細胞形成を抑制すると骨形成を促進する場合がありますか?」という非常に概括的な質問となってしまい、「No」という返事が一言だけきたのをよく覚えています(オリエンタル酵母工業 長浜研究所・古屋 優里子)

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