日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 川井 正信

FGF23は可溶型Klothoの存在下で、軟骨細胞増殖を抑制する

FGF23 suppresses chondrocyte proliferation in the presence of soluble α-Klotho both in vitro and in vivo.
著者:Kawai M, Kinoshita S, Kimoto A, Hasegawa Y, Miyagawa K, Yamazaki M, Ohata Y, Ozono K, Michigami T.
雑誌:J Biol Chem. 2013 25;288(4):2414-27
  • XLH
  • 低身長
  • FGF23

上岡 寛

論文サマリー

FGF23/α-klothoシグナルはリン恒常性維持において重要な役割を果たしている。X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)は、高FGF23血症とともに骨石灰化障害に加えて低身長を呈する。臨床的には、リン製剤および活性型ビタミンD製剤によりくる病病変の改善を認めるが、低身長の改善は十分でない。このような臨床的知見を背景に我々は、XLHでは高FGF23血症が軟骨細胞に対してリン代謝非依存性に作用し、成長障害の発症に関与しているのではないかと考え、FGF23の軟骨細胞の分化・増殖・成熟に対する影響の検討を行った。

In vitroでは、FGF23はATDC5細胞と初代培養軟骨細胞において、可溶型Klotho(sKL)の存在下でERKをリン酸化し、標的遺伝子であるEgr1の発現を増強した。Ex vivoのマウス胎仔中足骨器官培養系では、FGF23/sKLは中足骨の長軸成長を濃度依存性に抑制した。更に、その作用はFGFR3の発現をノックダウンすると阻害されたため、FGF23/sKLによる中足骨長軸成長抑制作用は主としてFGFR3を介すると考えられた。組織学的には、FGF23/sKL添加群で増殖軟骨層の短縮及び増殖軟骨細胞の増殖抑制を認めた。FGF23/sKLはIndian hedgehog(Ihh)の発現を減少させ、さらにFGF23/sKLによる中足骨の長軸成長抑制作用は、Ihh蛋白の添加により部分的に解除された。このことから、FGF23/sKLの中足骨長軸成長抑制作用の少なくとも一部は、Ihhの発現減少を介していると考えられた。
また、FGF23/sKLを添加した中足骨の肥大化軟骨層では、ColXa1の発現が減少し、石灰化が遅延していた。最後に、軟骨に対するFGF23/sKLシグナルの重要性をin vivoで検証した。XLHのモデルであるHypマウス(日齢7)にsKLを3日間腹腔内投与すると、血中リン濃度に変化を認めなかったが、増殖軟骨層の短縮及び増殖軟骨細胞の増殖抑制を認めた。

以上から、FGF23はsKL存在下で軟骨細胞に直接作用し、その増殖を抑制することで、XLH患者における低身長の発症機序の一因となっている可能性が示唆された。これらの知見は、今後XLH関連性低身長の病態解明および新しい治療法開発に繋がることが期待される。

上岡 寛

著者コメント

私は小児科医として低身長患児の治療に従事しつつ、低身長の病態解明の研究を行いたいと考えていました。大学院・留学時代は脂肪・骨代謝を主として研究してきましたが、研究7年目にしてようやく道上先生の研究室で軟骨細胞の研究を行う機会を得ることができました。
軟骨細胞の研究は今回が初めてでしたが、研究室のメンバーの助けもあり、帰国後最初の論文を得ることができました。この場を借りて感謝申し上げたいと思います。(大阪府立母子保健総合医療センター研究所・環境影響部門 川井正信)