日本骨代謝学会

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ANZBMS 2024 レポート
星(沼端)麻里絵(北海道大学大学院歯学研究院薬理学教室・歯科矯正学教室)

紹介演題 [1]
Mineralisation and collagen fibre compaction of recently formed bone differs between younger and older women, and is region-specific

キーワード

骨質、皮質骨多孔化

研究グループ

Mary Louise Fac1, 2, Narelle E McGregor1, Mark J Tobin3, Jitraporn (Pimm) Vongsvivut3, Rita Hardiman4, Natalie A Sims1, 2

  1. Bone Cell Biology and Disease Unit, St. Vincent's Institute of Medical Research, Fitzroy, Victoria, Australia
  2. Department of Medicine at St. Vincent's Hospital, The University of Melbourne, Fitzroy, Victoria, Australia
  3. Infrared Microspectroscopy (IRM) beamline, ANSTO – Australian Synchrotron, Clayton, Victoria, Australia
  4. Melbourne Dental School, The University of Melbourne, Melbourne, Victoria, Australia
サマリー&コメント

この演題は、若年女性と高齢女性の大腿骨を用い、新生骨における石灰化とコラーゲン線維の圧縮(collagen fibre compaction)について、年齢や部位による骨質の違いを研究したものである。20-40歳の若年女性10名と77-95歳の高齢女性10名から得られた大腿骨中央部のサンプルを解析し、比較した。大腿骨横断面を8分割し、後方と外側の2つの部位で、マイクロCTとシンクロトロンベースのフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて、新生骨の特性を解析した。解析の結果、両年齢群、両部位において、osteonal poreからの距離に応じて石灰化、炭酸塩置換、コラーゲン圧縮の増加が認められた。高齢女性では若年女性と比較し、両部位で、コラーゲンがより圧縮されていた。外側部位では、高齢女性の方が若年女性よりも石灰化と炭酸塩置換が大きく、コラーゲン圧縮の傾向と一致していた。後方部位では、年齢による石灰化の違いは観察されなかった。これらの結果から、高齢女性の骨芽細胞は皮質骨の多孔化とは独立して、より圧縮されたコラーゲンを沈着させることが示唆された。外側部位では、この圧縮されたコラーゲンとより多くの炭酸塩を含む石灰化が関連していたが、後方部位では、年齢との関連性がなかった。このことから、高齢女性では部位特異的に骨質が劣る新性骨を形成し、これが機械的ひずみの違いに関連している可能性があると結論付けている。

皮質骨多孔化や骨質の低下は、骨の脆弱化につながり、骨折リスクの増加からQOLの低下につながる。この研究では、年齢や部位による骨質の違いを詳細に解析しており、骨粗鬆症による骨折リスクの理解に貢献する可能性がある非常に興味深いテーマと思われた。

紹介演題 [2]
Region-specific increase in cortical porosity in the adult murine skeleton by inducing STAT3 hyperactivation in osteoblasts and osteocytes

キーワード

皮質骨多孔化、Socs3、STAT3

研究グループ

Natalie YY Koh1,2, Narelle E McGregor1, Natalie KY Wee1,2, Christa Maes3, Natalie A Sims1,2

  1. St. Vincent's Institute of Medical Research, Fitzroy, VIC, Australia
  2. University of Melbourne, Melbourne, VIC, Australia
  3. Laboratory of Skeletal Cell Biology and Physiology (SCEBP), Skeletal Biology and Engineering Research Center (SBE), Department of Development and Regeneration, KU Leuven, Leuven, Belgium
サマリー

加齢に伴い皮質骨の多孔性は高まるが、その原因となるシグナルは不明である。これまでの研究から発達中の骨格では、標的とするSocs3の欠失により骨芽細胞および骨細胞におけるSTAT3(シグナル伝達兼転写活性化因子3)シグナル伝達が高まると、皮質多孔性が高まることが示されている。この演題では、骨芽細胞および骨細胞におけるSocs3の欠失とSTAT3の過剰活性化を成体になるまで意図的に遅らせて、皮質多孔性が高まるかどうかを検証している。発表者らは、Ai9.tdTomatoの蛍光タグを導入したタモキシフェン誘導性Socs3欠損マウスを作製し、12-14週齢の雌マウスに遺伝子組み換えを誘導した。凍結組織学的検査により、海綿骨の骨細胞の約100%がtdTomato陽性であることを確認された。一方、皮質骨では、骨幹端で約80%がtdTomato陽性であったが、骨幹での陽性率は約50%にとどまった。マイクロCT解析の結果、Socs3欠損マウスの大腿骨骨幹端では、16週齢から32週齢にかけて、対照群と比較して皮質骨多孔性が約400%、低密度皮質骨が約20%増加した。組織学的検査から、骨幹端で骨吸収と骨形成が増加しリモデリングが亢進していることが明らかになった。一方、骨幹ではこの現象は観察されなかった。結論として、若年の成体骨格では、骨芽細胞および骨細胞でSocs3が欠失すると皮質多孔性が増加し、骨緻密化が減少することが示された。この現象は、リモデリングがより活発に生じる骨幹端のような領域のみに観察された。このことは、骨幹部のように比較的成熟した領域では、骨芽細胞および骨細胞における高いSTAT3シグナル伝達によって引き起こされる皮質多孔性の増加から保護されることを示唆している。

コメント

この研究は、STAT3シグナリングと皮質骨多孔性の関係、および骨の部位特異的な応答を明らかにした非常に興味深い内容であった。加齢に伴う骨の変化の理解に貢献するものであり、今後のさらなる研究報告に期待したい。

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