日本骨代謝学会

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ASBMR 2024 レポート
辻 直紀(東京大学医学部付属病院ティッシュエンジニアリング部)

紹介演題 [1]
A Novel Splice Variant of Proteoglycan 4 Plays Crucial Autocrine and Paracrine Roles During Bone Regeneration

キーワード

骨折治癒,Prg4

研究グループ

Reyad Elbarbary et al.

  • Department of Orthopaedics and Rehabilitation, The Pennsylvania State University College of Medicine
サマリー&コメント

RNA スプライシングは、イントロンが除去され、エクソンが成熟mRNAに結合されるRNA処理過程であり、特定のエクソンを飛ばすスプライシングを選択的スプライシング(AS)と呼ぶ。本研究グループは、4ヶ月齢のC57BL/6Jマウスの骨折モデルで、BulkおよびscRNA-seqを行い、仮骨におけるASを解析すると、プロテオグリカン4(Prg4)が浮かび上がった。炎症期の仮骨におけるPrg4の発現は骨折していない骨の約120倍であり、Prg4発現細胞は仮骨の前駆細胞集団(CPs)に局在していた。また、CPsのPrg4は3つのエクソンを欠くスプライシングバリアントとして発現しており、CPsにおけるスプライシングを制御する因子としてTGFB1を同定した。siRNAを用いて仮骨におけるPrg4をノックダウン(KD)すると、軟骨および骨形成するCPsが減少し、免疫応答が欠損した。このことから、Prg4 KDは治癒後期の軟性仮骨および骨形成不全を引き起こした。

軟骨で注目されているPrg4が、骨折治癒過程でのCPsの機能的な側面を制御すること、同時に免疫細胞の挙動を制御していることに興味を持った。また、CPsのPrg4の発現を制御している外的な因子がどのようなものなのかについて関心を持った

紹介演題 [2]
Nuclear factor I A (NFIA) mediates parathyroid hormone (PTH)-induced anabolic actions of the bone marrow endosteum

キーワード

PTH,骨内膜幹細胞

研究グループ

Hiroaki Manabe et al.

  • Department of Diagnostic & Biomedical Sciences, University of Texas Health Science Center at Houston School of Dentistry
サマリー&コメント

骨内膜に存在するFgfr3陽性幹細胞集団に対する間欠的な副甲状腺ホルモン投与(iPTH)による分化メカニズムを調べた。P21のCol1a1(2.3kb)-GFP; Fgfr3-creER; R26RtdTomatoマウスに3週間iPTHで処理し解析すると、GFP陽性細胞の中に多くの割合をtdTomato陽性細胞が占めていた。過去の報告のGli1+細胞のscRNA-seqを駆使して再解析するとNuclear factor I A (NFIA)が上昇していた。フローサイトメトリーによるNFIAの発現解析では、CD31-CD45-Cxcl12+細胞では発現しておらず、CD31-CD45-Fgfr3+細胞では発現していた。Col2a1-creおよびOsx-creERを用いてNFIAをノックアウトさせても明らかな異常は認めなかったが、Prrx1-creによるノックアウトでは、マイクロCTで骨量の減少を認めた。骨形態計測では、骨芽細胞数の減少を認め、皮質骨の石灰化速度は増加し、海綿骨では減少していた。また、Prrx1-NFIA cKOマウスでは、iPTHによる海綿骨量の増加を減弱させた。

Fgfr3陽性細胞でのiPTHによる骨形成促進作用における機構への迫り方や解析データが非常に綺麗で分かりやすく学ぶことが多かった。


ロイヤルオンタリオ博物館にて。右が筆者。左が鳥取大学の柳樂 慶太先生。