日本骨代謝学会

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IFMRS 2022 レポート
佐伯 直哉(大阪大学歯学部口腔解剖学第一教室)

紹介演題 [1-1]
ASSOCIATION BETWEEN CHANGE IN BODY MASS INDEX AND KNEE AND HIP REPLACEMENTS: A SURVIVAL ANALYSIS OF 7-10 YEARS USING MULTI-COHORT DATA;
紹介演題 [1-2]
ASSOCIATION OF WEIGHT CHANGE WITH STRUCTURAL CHANGES AS ASSESSED BY RADIOGRAPHY AND PAIN IN HIP OSTEOARTHRITIS OVER 8 YEARS IN WHITE WOMEN AGED 65 YEARS OR OLDER: THE STUDY OF OSTEOPOROSIS FRACTURES (SOF)

キーワード

変形性関節症、BMI、肥満

研究グループ

Zubeyir Salis*1, Amanda Sainsbury2

  • 1.The University of New South Wales, Australia
  • 2.The University of Western Australia, School of Human Sciences, Perth, WA, Australia
サマリー&コメント

 まず同じ演者らによる二つの演題を紹介したい。一つ目は10年にわたるBMIの変化率と、膝もしくは股関置換術施術の有無との相関を過去のコホート研究のデータを用いて調査したものである。Knee OAと診断された45—79才までの患者8000人強のデータをもとに、演者らはBMIの変化率とKnee OAの悪化は強い相関があり(Hip OAは相関無し)、これには患者のBMIによる肥満度分類とは一切関係がないと結論づけていた。二つ目は体重変化とHip OAに関する調査である。Hip OAの人は肥満であることが多く、実際にこれまでに肥満度が変形性股関節症のリスクを増加させるという報告もある。一方で、体重減少がHip OAの発症や増悪に予防的な効果があるかいまだはっきりとした決着がついていないようである。演者らは、Study of Osteoporosis Fractures(SOF)の白人女性(65才以上、5365人)の8年間の体重変化率のデータを用いて、Hip OA発症および病態進行との関連を調査した。股関節の構造的特徴、股関節痛の有無、股関節全置換術の既往などの調査から、演者らは、体重変化がHip OAの発症、病態進行いずれとも関連がみられないと結論づけていた。あくまで65歳以上の白人女性での結論であると演者らは限定しているものの、OAの病態には複合的な要素が関与していることを改めて感じるプレゼンであった。関節疾患は寝たきりの原因の一つであり早期に要因が解明されることが期待される。

紹介演題 [2]
SARCOPENIA AND ITS ASSOCIATIONS WITH FRACTURE RISK IN SWEDISH OLDER WOMEN FROM THE SAHLGRENSKA UNIVERSITY HOSPITAL PROSPECTIVE EVALUATION OF RISK OF BONE FRACTURES-(SUPERB) STUDY

キーワード

骨粗鬆症、サルコペニア

研究グループ

Anoohya Gandham* 1,2 et al.

  • 1.Mary MacKillop Institute for Health Research, Australian Catholic University, Victoria, Australia
  • 2.Department of Medicine, School of Clinical Sciences at Monash Health, Monash University, Clayton, Victoria, Australia
サマリー&コメント

 サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量および機能の低下とざっくりと理解されている。しかし、筋力測定値や身体機能測定などに少なからず設定値の違いがあり統一された定義がないため、臨床医にとってサルコペニアの診断は困難である。演者らはスウェーデンの高齢女性集団(75~80才、3028人)において、様々なサルコペニアの定義(SDDC、EWGSOP2、AWGS)に基づいた有病率を調査した。まずサルコペニア有病率はEWGSOP2、AWGS、SDOCの順に高いことがわかった。SDOCの定義でサルコペニアに該当する人は、サルコペニア該当しない人に比べて死亡リスクが高かったものの、EWGSOP2およびAWGSの定義でサルコペニアに該当する人での死亡リスクとの相関は認めなかった。また、SDOC定義によるサルコペニアの人は、あらゆる骨折および骨粗鬆症性骨折のリスクも増加したが、EWGSOP2やAWGSで定義した場合にサルコペニアに該当する人は、該当しない人と比べてこの傾向は認められなかった。これらのことよりSDOCによるサルコペニアは、低頻度ではあるが、骨折リスクと死亡を予測する唯一の定義に該当し、サルコペニアを予測し、健康を保つために有益であると結論付けている。歯科臨床の現場でもオーラルフレイルが見られる患者が増加しており、これらの定義がより正確になることで少しでも健康寿命が延びる事を期待している。