日本骨代謝学会

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ANZBMS 2022 レポート
真野 洋祐(産業医科大学整形外科)

紹介演題 [1]
Associations of Mechanical Loading from Physical Activity with Bone Mineral Density, Physical Function and Knee Impairment in Older Adults: the Tasmanian Older Adult Cohort (TASOAC) Study

キーワード

メカニカルストレス、骨密度、膝痛

著者

Carrie-Anne Ng[1], Feng Pan[2], Dawn Aitken[2], Tania Winzenberg[2], Flavia Ciccuttini[3], Peter Ebeling[1], Graeme Jones[2], David Scott[1], [4], [2]

  • [1] Department of Medicine, School of Clinical Sciences at Monash Health, Monash University, Clayton, Victoria, Australia
  • [2] Menzies Institute for Medical Research, University of Tasmania, Hobart, Tasmania, Australia
  • [3] Department of Epidemiology and Preventive Medicine, Monash University, Melbourne, Victoria, Australia
  • [4] Institute for Physical Activity and Nutrition, School of Exercise and Nutrition Sciences, Deakin University, Burwood, Victoria, Australia
サマリー&コメント

高いメカニカルストレスを与える身体活動は骨に有益であると考えられるが、高齢者では関節に害を及ぼすことが懸念される。この研究では、自己申告による身体活動から推定したローディングスコアと、骨密度(BMD)、身体機能、膝痛(WOMACスコア)、膝軟骨欠損、髄内輝度変化(BML)との関連を2.7年間にわたり縦断的に調査している。
性別や肥満度を含む共変量で調整した後、ローディングスコアが大腿骨頚部BMDおよび膝伸展力に有意な正の相関があった。ローディングスコアやMETSは、未調整モデルおよび調整モデルにおいて、脊椎BMD、WOMACスコア、膝軟骨欠損、BMLのいずれとも関連しなかった。この結果により高齢者において、自己申告による身体活動から推定されたローディングスコアは、膝関節の構造や痛みに明らかな悪影響を及ぼすことなく、2.7年間にわたって大腿骨頚部BMDおよび膝伸展筋力を高く維持したと結論づけられている。

実際の外来診療でも、骨粗鬆症患者に対しメカニカルストレスの重要性について説明を行うが、同時に変形性関節症を罹患している患者が多く、どの程度の強度の運動が適切であるのか興味があった。本研究結果から、高齢者の日常生活レベルの身体活動では、膝関節に悪影響を与えず骨にメカニカルストレスを与えられることがわかり、非常に興味深いと感じた。今後さらに、どの程度までの負荷が適切なのかについて評価ができれば臨床医としては非常に重要な指標となるのではないかと思った。

紹介演題 [2]
Identification of epigenetic factors deregulated in skeletal stem cells during high fat/glucose mediated inhibition of bone formation.

キーワード

2型糖尿病、エピジェネティック、TET

著者

Ensieh Hajimotallebi, Dimitrios Cakouros, Stan Gronthos, Nicholas Smith

  • The university of Adelaide, Adelaide, SA, Australia
サマリー&コメント

2型糖尿病患者は、肥満度とは無関係に骨粗鬆症や骨折のリスクが高いことが分かっている。これらの患者から得られた骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)は、骨形成能の低下と細胞死の増加を示す。現在のところ、高脂肪/高グルコースレベルがどのようにBMSCの骨形成能を抑制するのかは不明である。本研究では、高脂肪を介した骨量減少を回復させるためのターゲットを特定するために、高脂肪/グルコースに対するBMSCの機能不全を制御するエピジェネティックメカニズムを調査している。Ten-eleven translocation(TET)2が骨形成骨芽細胞の分化促進に必須であること、高グルコースレベルでTET1およびTET2の発現が抑制されることが明らかになった。さらに、高グルコース環境で培養したヒトBMSCは、通常の培養液で培養したBMSCと比較して、細胞死、老化、酸化ストレスが増加し、細胞増殖能が低下することが判明した。そこで、TETの骨形成への影響をin vivoで観察するために、Prx1:Creドライバーマウスを用いて間葉系におけるTet1/Tet2ダブルノックアウトマウスを作製した。その結果、高脂肪食を与えたPrx1:Cre Tet1/Tet2ダブルノックアウトマウスは、同じ餌を与えたPrx1:Creコントロールマウスと比較して体脂肪と耐糖能が増加し、骨密度が減少することが判明した。

糖尿病と骨粗鬆症との関連はたくさんの因子が複雑に関連していることが想定されるが、高血糖状態におけるエピジェネティックな制御因子の役割を同定しようとする試みが非常に興味深かった。