日本骨代謝学会

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ASBMR 2021 レポート
小原 幸弘(愛媛大学大学院医学系研究科分子病理学講座)

紹介演題 [1]
Soluble RANKL contributes to cortical thinning in aged mice

キーワード

可溶型RANKL、皮質骨、老化

研究グループ

Jinhu Xiong, Cecile Bustamante-Gomez, Igor Gubrij, Jeff Thostenson, Maria Almeida, Charles O’Brien

  • University of Arkansas for Medical Sciences, United States
サマリー&コメント

RANKLは一回膜貫通型タンパク質として産生されるが、細胞外領域でプロテアーゼにより切断されることで、可溶型タンパク質として放出される。しばしば膜型RANKLと可溶型RANKLのどちらが骨代謝を制御しているのかについて議論されるが、Charles O’BrienらのグループはRANKLのプロテアーゼ認識部位をゲノム編集によって除去することによって可溶型RANKLを完全に欠損したマウスを作製した。この可溶型RANKL欠損マウスでは3〜8ヶ月齢では軽微な破骨細胞数の減少がみられるだけだったため、若齢マウスにおける破骨細胞形成のほとんどは膜型RANKLが担っていることが示唆された。一方で23ヶ月齢では同腹仔の野生型では大腿骨皮質骨厚の減少が認められたが、可溶型RANKL欠損マウスではこの皮質骨厚の減少が顕著に抑制された。しかしながら、加齢による皮質骨の多孔性については野生型と比較しても優位な差は認められなかった。以上のことから可溶型RANKLは加齢による皮質骨厚の減少に寄与していることが示唆された。今後もCharles O’Brienらのグループによる膜型RANKLと可溶型RANKLに関する新しい知見の報告を期待している。

紹介演題 [2]
Targeted Clearance of p21-Positive Senescent Cells Ameliorates Radiation- Associated Bone Deterioration and Marrow Adiposity

キーワード

老化細胞、p21、radiation-induced osteoporosis

研究グループ

Abhishek Chandra, Anthony Lagnado, Joshua Farr, David Monroe, Joao Passos, Robert Pignolo, Sundeep Khosla

  • Mayo Clinic
サマリー&コメント

超高齢化社会を迎えた先進国では加齢性の骨粗鬆症が重要な社会問題となっている。p16やp19を代表とする細胞老化マーカー遺伝子を発現する老化細胞は生体内では非常に少ないポピュレーションであるにも関わらず、それら細胞が産生するSenescence-associated secretory phenotype (SASP)によって、周囲の細胞に悪影響を及ぼすことが知られている。Sundeep Khoslaらのグループは放射線誘発性骨粗鬆症(RIO)モデルではp21遺伝子発現の誘導がp16の発現誘導に先駆けて起こっていることを見出し、既報のAP20187誘導性老化細胞除去マウスp16INK-ATTACマウスモデルと同様に設計された新規のAP20187誘導性老化細胞除去マウスp21ATTACを作製した。右大腿骨骨幹部の5mmの範囲に24 Gyの焦点放射線を照射した後、各遺伝子組み換えマウスはVehicleまたはAP20187を週2回投与された。p16INK-ATTACマウスモデルではp16発現細胞を除去しても放射線によって誘導されたTelomere Dysfunction-induced foci (TIFs)もBV/TVの減少も改善しなかったが、p21ATTACマウスモデルでは、p21発現細胞の除去によって、放射線によって誘導されたTIFsの上昇およびBV/TVの低下が改善された。また、p21発現細胞の除去はSASPであるIl6Mmp12の発現を有意に抑制した。以上のことから放射線誘導性骨粗鬆症において、p16よりもp21発現細胞が骨量減少に寄与していることが示唆された。今後、ヒトにおいても同様にp21が重要なファクターとなるのか、続報を期待している。