日本骨代謝学会

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ECTS 2021 レポート
堀井 千彬(東京大学医学部附属病院 整形外科)

紹介演題 [1]
P111: Skin autofluoresence, a non-invasive biomarker of advanced glycation end-products (AGEs), is associated with frailty: The Rotterdam study

キーワード

AGEs, frailty

研究グループ

Komal Wagas, et al.

サマリー&コメント

AGEs(advanced glycation endproducts, 終末糖化産物)は糖とアミノ基のメイラード反応によって作られる生成物の総称であり、加齢や糖尿病、腎障害等と関連することが報告されている。一方、フレイルはADLが低下した不可逆な状態に至る前の可逆的な状態と理解されており、要介護等の予防において重要な概念である。血液中のAGEsとフレイルの関連については既にいくつかの報告があるが、血液中のAGEsは生理学的に変動するため、組織に結合したAGEsを測定する方が評価に適していると考えられる。特に皮膚はturnoverが遅く、autofluoresence(skin AF)によって非侵襲的にAGEsを測定できるため、著者らはskin AFによるAGEsとフレイルの関連を明らかにするためにこの研究を行った。

Rotterdam studyはオランダのロッテルダムで1990年に開始された大規模な住民コホート研究で、本研究では横断研究によりAGEsとフレイルの研究を明らかにした。Skin AFにより測定したAGEsとフレイルは関連するとの結果であった。

Skin AFによるAGEsの測定は様々な研究に活用されてきており、今後ますます他疾患との関連や、AGEsに対する介入の効果の検証等が期待される。

紹介演題 [2]
COP25: Persistence with osteoporosis treatment in patients from the Lille University Hospital Fracture Liaison Service

キーワード

Osteoporosis, treatment, persistence

研究グループ

Anthony Delbar, et al.

サマリー&コメント

骨折によるADL, QOLの低下を予防するため骨粗鬆症(OP)治療が重要であることは論をまたないが、世界的に見ても治療率が低いことが問題とされており、これを解消するためにFracture Liaison Service(FLS)の設立等がなされてきた。また治療を開始しても、継続性が低いことも指摘されており、FLSが治療継続性も向上させるという報告もあるが、これらは主として経口のビスフォスフォネートについての報告であり、注射薬についての報告はまだない。そこで著者らは、大学病院のFLSを介したOP治療(注射薬が大半を占める)の継続性について評価を行った。投薬が開始された275人のうち、150人はゾレドロン酸、63人はテリパラチド、39人がデノスマブであった。1年後の全体での治療継続率は84.1%で、デノスマブの継続率が最も高く、97.1%だった。多変量解析による治療中断の独立した予測因子は家庭医によるフォローアップとゾレドロン酸による治療であった。

過去の報告と比較すると全体での治療継続率は高く、経口薬に比して注射薬の優位性が示唆される。本研究では参加者がFLSでのフォローアップを明確に希望した場合にのみ、FLSでフォローアップが行われ、他は家庭医でのフォローアップというプロトコルであったため、よりOP治療に熱心な参加者がFLSでのフォローアップを希望した可能性があり、結果の解釈には注意が必要であると感じた。注射薬のpersistenceおよびFLSの果たす役割について、今後の研究が望まれる。