日本骨代謝学会

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ANZBMS 2019 レポート
佐伯 法学(愛媛大学学術支援センター動物実験部門)

佐伯 法学

紹介演題 [1]
Endoplasmic reticulum mediates mitochondrial transfer within the osteocyte dendritic network

キーワード

骨細胞, mitochondrial transfer, イメージング,オプトジェネティクス

著者

Junjie Gao et al.

  • Perron Institute for Neurological and Translational Science, Nedlands, WA, Australia
サマリー&コメント

近年、様々な間質細胞において、組織損傷に応答して隣接した細胞にミトコンドリアを移入する現象(mitochondrial transfer)が報告されている。また、Osteocyteは微細な細胞質突起でネットワークを形成し、隣接した骨細胞と直接コンタクトしていることが知られる。

本研究において、著者らはオプトジェネティクスの手法を用いてミトコンドリア動態をトレースすることでOsteocyteのmitochondrial transferを証明した。マウス由来正常Osteocyteは突起を介し、ストレス下の隣接したOsteocyteにミトコンドリアを輸送した。驚くべきことに、突起ネットワーク間のミトコンドリアの移動は小胞体と同調しており、それらの働きはMitofusin2やGTPaseを介していた。以上より、mitochondrial transferに小胞体が関わる可能性と、Osteocyteの恒常性維持のメカニズムの一端が示された。

本研究は、解析の困難なOsteocyteに関して、コンフォーカル顕微鏡や超解像顕微鏡など様々なイメージング手法と解析法を用いて、非常に美しい写真で結果を示していました。本研究結果から、Osteocyteにおける細胞内代謝調節メカニズムの発展が期待される。

紹介演題 [2]
EphrinB2 deficiency in osteocytes leads to increased mineralization and autophagosomes due to a Golgi-mediated lysosomal storage disorder

キーワード

骨細胞, ephrin-B2, オートファジー

著者

Martha Blank et al.

  • Bone Cell Biology and Disease Unit, St. Vincent’s Institute of Medical Research, Melbourne, Victoria, Australia
サマリー&コメント

受容体型チロシンキナーゼEphとそのリガンドephrinは膜タンパクであり、細胞間コミュニケーションに働く膜タンパクである。過去に著者らのグループは、マウスのOsteocyteのephrin-B2遺伝子を発現抑制すると、[1]骨が高石灰化を伴い脆性化すること、[2]細胞内にオートファゴソームが蓄積することを見出した。本研究では、ephrin-B2がOsteocyteのオートファジーや骨石灰化を制御しているか検証した。Osteocyte-like cell lineにおけるラパマイシン誘導性のオートファジー増加は石灰化沈着を亢進した。また、可溶化ephrin-B2-Fcの刺激により、Osteocyte-like cell lineのオートファゴソームの蓄積が抑制され、さらに、RhoA/ROCK阻害剤の投与はこの効果を抑制した。この結果から、Osteocyteのephrin-B2によるEphBシグナルは、少なくともRhoA/ROCKを介してオートファジーを制御していることが示唆される。また、ephrin-B2欠損Osteocyteはライソゾームマーカーやシスゴルジマーカーの発現が有意に減少した。以上より、ephrin-B2欠損Osteocyteは、ライソゾーム合成が不十分でゴルジ装置のシス体に欠陥があるためにオートファゴソームが蓄積し、その結果、石灰化沈着が亢進したと考えられる。

本研究に関して興味深い現象が得られているため更なる検証が期待される。一方で、上述のごとくEph/ephrinは接着分子(インテグリンやコネキシンなど)を制御して細胞-細胞間でインタラクトすることが知られている。「紹介演題1」と合わせて、ミトコンドリア輸送とオートファジーに関連があるかもしれないと妄想し興味深く拝見させてもらった。