日本骨代謝学会

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ASBMR 2019 レポート
荒井 誠(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 細胞生理学分野)

荒井 誠
左:Orange County Convention Centerとしてよく見る写真はこれですが、今回の会場West Concourseはその向かいにある挿入図の建物。右上:筆者の発表風景。右下:Arai in ORLANDO。

 この度、2019年9月にオーランドで開催されたASBMR 2019に参加しました。初めての参加でしたので、過去のレポートを参考にまずは初日午前中のHighlights of the ASBMR 2019 Annual Meetingを聞き、領域全体の流れを感じることができました。
 その後は口演発表を中心に聞いていましたが、正直なところ「Hypothesis-drivenとはいっても、storyありきで何でもかんでもやっていいのか。」という感想を抱く発表が意外にも多く、学会に参加してこんなに悲しい気持ちになるとは思いませんでした。
 自分自身は骨細胞と長鎖ノンコーディングRNAに関する発表を行いました。幸いplenary posterに採択されたものの、よりインパクトの大きなセッションに採択されるには何が足りないのか、考えさせられる機会となりました。

紹介演題 [1]
[1042] Stimulation of Piezo1 by Mechanical Loading Promotes Bone Anabolism

キーワード

メカニカルストレス、Caチャネル、骨形成

研究グループ

Xuehua Li, Li Han, Intawat Nookaew, Erin Mannen, Matthew Silva, Maria Almeida, Jinhu Xiong

  • University of Arkansas for Medical Sciences
サマリー&コメント

骨細胞はメカニカルストレスを感知して骨リモデリングの調整を担っているとされる。その感知機構としてはインテグリン、繊毛、Caチャネルが代表的であり、演者らはCaチャネルに着目した。骨細胞の細胞株であるMLO-Y4にfluid flowを加えて発現が上昇する遺伝子をRNA-seqで抽出し、Caチャネルのうちで発現が最多のPiezo1に注目した。MLO-Y4細胞でPiezo1をノックダウンするとshear stressに対する反応性が低下し、Dmp1-Creを用いたPiezo1のcKOマウスは骨形成低下による骨量低下を呈した。同cKOマウスではWntシグナルが低下しており、力学的負荷によって見られる骨形成亢進反応も減弱していた。一方で、Piezo1のagonistであるYoda1によってfluid flow負荷時と同等の作用が得られ、マウスへの投与によって骨量も増加した。これらの結果から、Piezo1はメカニカルストレスの感知を介した骨形成促進に寄与していると考えられた。

紹介演題 [2]
[1021] Shared autonomic pathways connect bone marrow and peripheral adipose tissues across the central neuraxis

キーワード

骨髄脂肪組織、逆行性トレーシング、交感神経

研究グループ

Natalie Wee, Madelyn Lorenz, Yusuf Bekirov, Mark Jacquin, Erica Scheller

  • University of Connecticut Health Center
サマリー&コメント

脂肪組織への神経支配といっても、白色脂肪組織と褐色脂肪組織では神経支配が異なる。骨髄内にも脂肪が存在し、エネルギー代謝・骨代謝・造血などに関与することが知られているが、骨髄脂肪組織への神経支配はよく分かっていない。演者らはマウスの脛骨切片の免疫染色によって、チロシンヒドロキシラーゼ陽性の交感神経の多くは骨髄内の血管周囲に存在するものの、一部は自由神経終末として骨髄脂肪に分布していることを見出した。骨髄脂肪および鼠径部白色脂肪組織からPRVを用いた逆行性トレーシングを行うと、網様体・青斑核・視床下部室傍核などの交感神経に関連した領域に両組織由来の信号が確認された。これらの結果は、骨髄脂肪と白色脂肪組織は共通した神経回路で支配されている可能性を示唆している。ただ、現状ではマッピングに留まっているため、機能との関連に関しては今後の検討が必要となる。