日本骨代謝学会

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ASBMR 2018 レポート
沢田 雄一郎(愛媛大学医学部 泌尿器科学講座)

沢田 雄一郎
外車が絵になるモントリオールの街並み

紹介演題 [1]
Circulating osteoprogenitor cells provide a novel diagnostic biomarker for bone metastasis

キーワード

循環骨前駆細胞, 骨転移, 乳がん

研究グループ

Hyun Jin Sun, Kyung-Hun Lee, Kyoung Jin Lee, Serk In Park, Young Joo Park, Seock-Ah Lim, Sun Wook Cho

  • Seoul National University Hospital
サマリー&コメント

本研究では、乳がんの進行および、骨転移の発症予測および治療モニタリングにおける、循環する骨前駆細胞(cOPs)の有用性を調べた。ヒト乳がん脛骨骨転移モデルマウスにおいて、末梢血単核細胞のフローサイトメトリー分析により、cOP(CD15-CD45-オステオカルシン+)が腫瘍細胞播種後1週間で有意に増加することが示された。これは、腫瘍注入後2週間前後で組織学的分析により観察される腫瘍細胞コロニー形成や、4週間で観察される骨破壊を伴う顕著な転移病変の成立と比較して早期に観察可能なものである。また、cOPsはゾレドロン酸(ZA)投与といった骨転移に対する治療にも対応し減少した。また、98人の転移性乳がん患者において、cOPを分析した結果、cOPsは他の転移群よりも骨転移において有意に高く、骨転移の病勢およびのZA投与といった治療にも対応していた。これらの結果から、疾患進行および骨転移の治療モニタリングのための診断ツールとしてのcOP有用性が示唆された。
自身の研究グループでは前立腺がんの骨転移に関する研究を行っており、考え方や方法論など参考になりました。
Liquid biopsyと同様に循環している細胞を解析するということが、直感的に分かりやすいと感じました。

紹介演題 [2]
An IAP Antagonist Inhibits Breast Cancer Metastasis to Bone by Killing Cancer Cells, Inhibiting Osteoclast and Enhancing Osteoblast Differentiation

キーワード

SM164, 骨転移, 乳がん

研究グループ

Wei Lei, Rong Duan, Brendan Boyce, Zhenqiang Yao

  • University of Rochester Medical Center
サマリー&コメント

乳がん骨転移巣において、破骨細胞(OC)形成が骨溶解を引き起こし、骨芽細胞(OB)が溶解病変を修復できず、がん-骨細胞相互作用により細胞の増殖が局所的に促進されている。SM164はアポトーシス阻害タンパク質(IAP)を分解してがん細胞のアポトーシスを誘導する小分子化合物である。本研究では、SM164が破骨細胞(OC)形成を阻害し、骨芽細胞(OB)分化を刺激する作用を有することを見出した。MDA-MB-231luc細胞を左心室に接種し、SM164投与と、標準化学療法を比較した。 SM164投与群はVehicle群、標準化学療法群と比較して骨転移の発生および骨破壊の程度を有意に減少させた。SM164およびSTC群では、転位部位内のOC数が有意に抑制されていた。SM164はマクロファージおよびOB系細胞におけるRANKLおよびTGFβ1によるTRAF3分解がそれぞれOC形成を阻害し、OB分化を阻害した。本研究の知見は、SM164が抗がん作用のみならず、骨転移を予防する新規薬剤として有効である可能性を示唆している。抗がん作用と、骨転移の予防という点から、紹介演題[1]で示されたような方法で、骨転移発症の可能性が高い症例を選択し、予防にSM164を投与するといった方法もおもしろいのではと感じました。