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ASBMR 2018 レポート
渡部 玲子(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)

渡部 玲子

紹介演題 [1]
Probiotic Treatment Using a mix of Three Lactobacillus Stain Protects Against Lumbar Spine Bone Loss in Healthy Early Postmenopausal Women(#1071)

キーワード

プロバイオティクス、Osteomicrobiology

研究グループ

Sahlgrenska Academy at University of Gothenburg, Sweden

サマリー&コメント

近年、様々な分野で注目を集めている腸内細菌に関して、骨領域では“Osteomicrobiology”称して骨の成長や維持、骨粗鬆症に関わる機序が報告されている。基礎的検討ではプロバイオティクスによる骨量維持作用がすでに示されており、ヒトにおいても治療効果が期待される。
今年のASBMRでは、閉経後骨粗鬆症に対するプロバイオティクスの効果を検討した多施設共同プラセボ対照ランダム化比較試験の結果が報告された。平均年齢58.6±4.0歳の健常閉経後女性234人を対象に、3種類のlactobacillusを12ヶ月投与すると、プラセボ群では腰椎骨密度が-0.77%(p=0.0006)と有意に減少したが、プロバイオティクス群では-0.17%(p=0.40)と維持された。また、これらの効果は閉経後6年未満の群で特に顕著に認められ、プラセボ群で-1.21%(p=0.0001)減少したのに対して、プロバイオティクス群では-0.18%(p=0.56)にとどまった。プロバイオティクスによる治療が閉経後の骨量減少を予防する可能性が示唆された。副作用については両群で差を認めず、骨粗鬆症予防における安全性の高い治療として期待される。

紹介演題 [2]
2) The distribution of prevalent and short-term incident vertebral fractures on chest CT scans according to fracture severity in smokers with and without COPD (SUN-0767)

キーワード

COPD、胸椎骨折

研究グループ

ECLIPS study

サマリー&コメント

私たちの注目するCOPD関連骨粗鬆症については、オランダのECLIPS study (Evaluation of COPD Longitudinally to Identify Predictive Surrogate End-points )から3演題が発表された。ECLIPS studyは、非COPD喫煙者をコントロールとしてCOPDの臨床経過を検討する3年間の縦断的研究で、主に胸部CT画像を用いて骨折や骨密度が検討されている。対象はCOPD症例998人を含む1238人(平均年齢61.3±8.0歳、男性61%)、ベースラインの椎体骨折有病率は24.4%で、3年間の新規椎体骨折発生は24.0%であった。また、骨折部位の評価としては、既存骨折、新規骨折ともに第7-8、11-12胸椎に多く、SQ grade別の評価でも同様の傾向を示した。この検討には非COPD症例も含まれているが、比較的短期間の本検討でも既報のように胸椎骨折が多く発生することが明らかになった。COPD関連骨粗鬆症については、疾患動物モデルが存在しないため、基礎的検討の進展には乏しい。今後は、さらなる病態の検討とともにCOPD関連骨粗鬆症に対する治療介入効果についてもさらなる検討が必要である。

渡部 玲子