日本骨代謝学会

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ASBMR 2018 レポート
中村 賢(慶應義塾大学医学部 整形外科)

中村 賢

紹介演題 [1]
Investigating the influence of adult hip shape genetic variants across the life course: findings from a population-based study in adolescents

キーワード

遺伝子多型、大腿骨頚部骨折、変形性股関節症

研究グループ

Monika Frysz et al.

  • Population Health Science, Bristol medical School, University of Bristol, United Kingdom
サマリー&コメント

大腿骨の形状は変形性股関節症および大腿骨頚部骨折の両方の危険因子であることが知られている。最近のゲノム解析で成人(平均62歳)の大腿骨形状に関係する9つの遺伝子多型が同定されているが、生涯にわたって股関節の形状に影響を及ぼしているかどうかは不明であった。本研究では思春期と青年期の大腿骨形状と遺伝子多型の関係を調べた。The Avon Longitudinal Study of Parents and Children (ALSPAC)から得られた思春期(平均13.8歳)3550人と青年期(平均17.8歳)3175人の股関節DXAデータを53点のStatistical Shape Model (SSM)で解析し、成人での検討で遺伝子多型との関連を認めた10の股関節形状モデルに分類した上で、思春期と青年期の被検者の遺伝子多型との関連をSNPTESTで調べた。頚部骨折の原因となりうる大腿骨頚部の幅とSOX9が、また変形性股関節症の原因となりうる骨頭形状とKLHL42-PTHLHおよびRunx1が関連するという結果が得られた。これらは軟骨内骨形成に関与する遺伝子であり、その多型が思春期の段階から大腿骨形状に影響し、頚部骨折および変形性股関節症のリスクとなっていることが分かった。

日本においては臼蓋形成不全が二次性股関節症の原因として多く、骨盤形状が重要なのですが、海外では原発性股関節症が多いため大腿骨形状に注目しているものと思われます。臼蓋形成不全の遺伝子多型は既に報告されていますが、臼蓋の被覆割合(形状)と遺伝子多型の相関についてもこういった規模で解析すると面白いと思いました。
(#1037, Most Outstanding Basic Abstract)

紹介演題 [2]
VK5211, a Novel Selective Androgen Receptor Modulator (SARM), Significantly Improves Lean Body Mass in Hip Fracture Patients: Results of a 12 Week Phase 2 Trial

キーワード

サルコペニア、 Selective androgen receptor modulator (SARM)、大腿骨頚部骨折

研究グループ

Branko Ristic et al.

  • Clinical Center Kragujevac, Clinic for Orthopedics and Traumatology, Serbia
サマリー&コメント

大腿骨頚部骨折の患者において受傷6か月後のBMIは30%程度低下した後、受傷12か月後のBMIは受傷前の20%減くらいまでしか改善しないとされ、筋力低下により更なる転倒や骨折につながりうることが知られている。選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)は筋肉量を増加させ、他のアナボリックステロイドより副作用が少ない。新規の経口SARMであるVK5211は動物モデルで筋量と骨密度を改善し、第1相試験で21日間の投与で除脂肪体重を増加させた。本研究はその第2相試験にあたり、頚部骨折患者108人をプラセボ群、VK5211 0.5mg群、1.0mg群、2.0mg群に分けて12週間毎日経口投与を行った。VK5211を投与された患者はTotal body less head (TBLH)が容量依存的にプラセボの6~10倍に増加して脂肪量が減少したが、握力には変化がなかった。薬剤関連の有害事象は認められなかった。骨代謝マーカーはCTXが減少した。

SARMは日本では2017年のサルコペニアガイドラインで一部有効とされながらも承認されていませんが、アメリカではサプリメントとして入手できる状態にあります。構造が異なるいくつものSARMが開発されており、これもその内のひとつです。分岐鎖アミノ酸や抗マイオスタチン抗体など、サルコペニアの治療薬候補は現在様々なものが開発されており、サルコペニアの治療が確立する日も遠くはないものと期待しています。
(#1072, Most Outstanding Clinical Abstract)

中村 賢
教会などの歴史的建造物が点在する一方で、街のいたるところにアートが描かれ、アートを展示するギャラリーも多い芸術の街です。

中村 賢
右はご当地グルメのプーティン。真ん中はカナダ名物のサーモンタルタル。左はチキンとアボカド。