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ANZBMS 2018 レポート
田中 智哉(愛媛大学大学院 医学系研究科 病態機能解析分野)

田中 智哉

紹介演題 [1]
Intravital imaging of osteoclasts in vivo reveals novel cellular dynamics which may underlie the therapeutic response to Denosumab withdrawal

キーワード

生体イメージング、RANKL、OPG

研究グループ

Michelle McDonald1, Pei Ying Ng2, Danyal Butt1, Weng Hua Khoo1, Julian Quinn1, Paul Baldock1, Nathan Pavlos2, Michael Rogers1

  • 1. Garvan Research Institute
  • 2. University of Western Sydney
サマリー&コメント

抗RANKL (receptor activator for nuclear factor -κB ligand) 抗体であるDenosumabは、RANKL-RANKシグナルを阻害することで、破骨細胞分化・活性化を抑制する骨粗鬆症治療薬であるが、休薬後に急激な骨密度の減少が生じることが知られている。これは、破骨細胞の抑制が解除されたことによるオーバーシュート現象とされているが、詳細は明らかとなっていない。
演者らは、この現象のメカニズムを解明するために、二光子励起顕微鏡を用いたマウス脛骨の破骨細胞の生体イメージングを行った。本研究では、抗RANKL抗体ではなく、RANKLのおとり受容体として機能するOPG (Osteoprotegerin) を用いている。
演者らは、可溶性RANKLの処置後の破骨細胞の生体イメージングを行い、可溶性RANKLにより活性化された破骨細胞は細胞融合および分裂を引き起こすことを捉えた。また、分裂した破骨細胞は、周囲の破骨細胞と再度融合することを観察した (osteoclast recycling) 。この現象はOPG処置により抑制されるが、小型円形LysM+Blimp-1+破骨細胞 (recycling osteoclasts) はアポトーシスをするのではなく、生存し続け、蓄積していることを観察した。OPG処置中断3~4週間後には、蓄積していたrecycling osteoclastsが再度融合を始め、それに伴って、骨量が減少した。
Denosumab休薬後の急激な骨密度の減少という臨床的な課題に対して、破骨細胞の細胞融合および分裂という動的な現象からメカニズム示した研究であり、改めて、生体イメージングの魅力を感じた。

紹介演題 [2]
Post-fracture mortality: A latent class analysis of multimorbidities

キーワード

骨粗鬆症、前向き臨床研究

研究グループ

Thao Ho-Le1, Thach S. Tran2, Jacqueline R. Center2, John A. Eisman2, Tuan V. Nguyen2

  • 1. The University of Technology, Sydney
  • 2. Garvan Institute of Medical Research
サマリー&コメント

骨粗鬆症患者は、一般的に他の慢性疾患を罹患しているが、多疾病罹患と死亡率の関係性は明らかとなっていない。演者らは、骨折のある30歳以上の女性890人と男性244人を20年以上観察し、変形性関節症、心血管疾患、II型糖尿病、癌、慢性関節リウマチ、神経疾患、および精神疾患などの健康状態を記録し、多疾患罹患のパターンとそれが骨折後の死亡率へ与える影響を検討した。
多疾患罹患率は、女性で38%、男性で35%であり、骨折後死亡率のリスク増加と関連していた。latent class analysisにより、低多疾患罹患群68%、中多疾患罹患群20%、および高多疾患罹患群12%の3つの群を同定した。高多疾患罹患群の5年後の死亡率は45%であり、中多疾患罹患群より1.64倍高く、低多疾患罹患群より2.3倍高かった。高多発罹患群は他の群よりも骨密度が低かった。また、心血管疾患、II型糖尿病、関節リウマチおよび精神疾患の罹患により死亡リスクが増加した。多疾患罹患に起因する骨折後死亡率の割合は、女性は33%、男性は28%であった。
骨折のある骨粗鬆症患者の3分の1以上が多疾患罹患であり、骨折後死亡した患者の3分の1を多疾患罹患の患者が占めていたとのことで、こういった時間のかかる前向き臨床研究により、疾患間の関係性が明らかになることを期待する。また、貴重な研究なので、さらにゲノム等の解析まで踏み込んで解析することを期待したい。

田中 智哉