日本骨代謝学会

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ANZBMS 2018 レポート
杉崎 りさ(昭和大学 歯学部 口腔生化学講座)

杉崎 りさ

紹介演題 [1]
Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw-like lesion is prevalently induced in a chemotherapeutic dosedependent manner in mice.

キーワード

BRONJ 化学療法 抜歯

研究グループ

Nagasaki University

サマリー&コメント

シクロホスファミドは多発性骨髄腫に用いられる治療薬である。静脈内ビスホスホネートは病理学的椎骨骨折や骨痛などの骨関連症状を軽減するために用いられている。この研究の目的はシクロホスファミド(CY)単独および、シクロホスファミドとゾメタ(ZA)の併用療法におけるマウスの抜歯窩の治癒を評価した。
マウスに低用量のCY-L(50 mg/kg)、中容量のCY-M (100 mg/kg) 、高容量のCY-H (150 mg/kg)、ZA(0.05 mg/kg)、CY及びZAの併用法が7週間投与された。両側の第一大臼歯の抜歯は薬剤投与後3週間後に行われ、抜歯後4週間でマウスの安楽死は行われた。抜歯窩の骨と軟組織の治癒はマイクロCT分析、組織形態計測、免疫組織化学的検査により定量的に評価された。
その結果、CY単独投与は稀に開放創を誘発し、CY濃度依存的に骨治癒の遅延を認めた。またZA単独ではマウスのBRONJ様病変は誘発されず、対照的にCY/ZA併用投与はBRONJ様病変を誘発し、CY濃度依存的に骨治癒を遅らせ軟組織治癒を遅らせた。筆者らの結果はCYがZAとの併用法においてのみ、CYはBRONJのリスクファクターとなることを示した。
化学療法薬とビスホスホネート製剤の併用投与は臨床上多く行われており、それによる薬剤性顎骨壊死は口腔外科領域では多く認める。本研究によるビスホスホネート製剤でなく、化学療法薬側の濃度と顎骨壊死との関連は非常に興味深く、今後さらなるメカニズムの解析を期待している。   

紹介演題 [2]
What is the natural history of Camurati-Englemann disease?

キーワード

カムラチ・エンゲルマン病、TGF-β1

研究グループ

University of Auckland

サマリー&コメント

カムラチ・エンゲルマン病[CED]はTGF-β1変異に起因する長骨および頭蓋骨の骨粗鬆症を特徴とするまれな頭蓋骨異形成であり、常染色体優性遺伝疾患である。多くが重度を呈すると報告されており、その症状は骨痛、筋力低下、食欲不振および歩行障害を伴う。その病態の程度は、患者間で異なる。発症頻度が稀であるため、病態の正確な把握がなされていないことが現状である。
筆者らはCEDを持つ家族の病態を評価する機会を得た。家族性のTGF-β突然変異[R218H]を保有している成人9人と子供1人(6-68歳)を研究した。症状の詳細な把握および骨格の放射線写真と99Tc-MBP骨シンチグラフィーを調べた。病気の進行度にしたがって、骨シンチググラフィーをランク付けした。
その結果から、3名の被験者は重度のCEDを有していた。6歳児は疼痛および歩行障害を有し、2例の若年成人は頭蓋骨の関与から脳神経麻痺を呈した。残りの7例はほとんど無症状であったが、10代後半に四肢の痛みを経験したが、特別な治療を受けず軽快した。現在の疾患活動をシンチグラフィーで評価したところ、年齢に反比例することがわかった。いくつかの被験者では、広範囲の放射線学的関与およびスキャン上で疾患活動性を示し、活性疾患プロセスは経時的に減少することがわかった。
CEDは今回初めて耳にした疾患であった。本邦における推定患者数は約30人、現在まで世界中で約200人の論文が報告されている。治療は現状では対症療法のみであり、骨痛に対するステロイド投与や、神経麻痺に対する外科的治療である。成人前の多感な時期に症状の増悪を来す疾患であるため、患者のQOL向上の為、原因療法の追求が必要である。

杉崎 りさ