日本骨代謝学会

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ANZBMS 2018 レポート
吉田 優子(昭和大学 歯学部 口腔生化学講座)

吉田 優子

紹介演題 [1]
Bone vasculature and its role in bone remodelin

キーワード

bone remodeling, vessel, intPTH

研究グループ

Marie-Helene Lafage-Proust

  • MH Lafage-Proust, B Roche, INSERM U1059, Université de Lyon,Saint-Etienne, France
サマリー&コメント

骨の血管は、他の臓器と同様に、酸素、栄養素および規制因子をもたらし、代謝性老廃物の除去だけでなく、骨前駆細胞の輸送や保有も行う。これらは、血管細胞が骨細胞を刺激し、次に血管を調節する手がかりを引き出す相互の複雑なネットワークによって支持される。
骨における血管の挙動を分析するモデルとして、副甲状腺ホルモン(int PTH)の断続的投与を行ったところ、血管新生因子であるVEGFがブロックされ、げっ歯類のPTHの骨形成を低下させた。しかし、骨の血管密度は変化せず、骨表面の血管の再配置や、微小血管の形態学的変化の誘導、「血管成熟」と呼ばれる血管新生が起こることがわかった。 骨脈管構造の中の血管は骨リモデリングに特異的に関与し、これらの血管は、血管形成の刺激タイプに応じて差別的に応答し得る。 血管新生の合図の微調整は、通常の骨リモデリングを保証するために、時間および位置依存的に重要である。骨中の血管の役割や成人の骨形成への理解を深めることは、骨の脆弱性の治療に対する優れた薬剤および治療法の確率の足がかりとなることが期待される。

骨形成と血管の関係に関する研究は、私自身の研究テーマと通ずる部分が多くとても興味深い内容であった。骨リモデリングと血管の関係性は未だ明らかになっていない点が多く、今後更なる研究が期待される。

紹介演題 [2]
Zoledronate every 18 months for 6 years in osteopenic postmenopausal women: Effects on fractures and non-skeletal endpoints

キーワード

Bisphosphonate, osteopenic, fracture

研究グループ

Mahmoud Bakr, Wendy Kelly, Athena Brunt, Bradley Paterson, Helen Massa, Nigel Morrison, Mark Forwood

  • Griffith University
サマリー&コメント

ビスホスホネートは骨粗鬆症患者の骨折を予防するが、骨減少症患者に対する有効性は不明である。閉経後の女性の骨折の多くは骨減少症患者に発生するため、骨減少症の閉経後女性における有効性のある治療が必要となる。本研究では、2000人の骨減少症の閉経後女性に、無作為にゾレドロン酸5mgまたは生理食塩水を18ヶ月間隔で4回投与し、6年間結果を追跡した。ベースライン年齢は71歳であり、大腿骨頚部のTスコアは-1.5(0.5)であった。骨粗鬆症性骨折のエンドポイントにおいて、プラセボ群は190人の女性で227の骨折が確認され、ゾレドロン酸投与群では122人の女性において131の骨折があり、ハザード比(HR)は0.63であった。また、ゾル投与群では、非椎体骨粗しょう症骨折(HR 0.66)、症候性骨折(HR 0.73)、椎骨骨折(HR 0.45)も減少していた。有害事象の速度比は、心筋梗塞0.6、複合血管終点0.7、癌0.7、および乳癌0.6であった。以上より、ゾレドロン酸は、骨減少症の高齢女性の骨折を予防することが示唆された。癌および血管疾患に見られる効果は、以前の研究からのデータと一致しており、これらの疾患予防のためのゾレドロン酸投与試験の必要性が提案される。

本研究のような、従来から骨粗鬆症治療の中心になってきたビスホスホネート製剤についての更なる研究に加え、PTHなどの新薬の研究も今後期待される。

吉田 優子