骨ルポ
ANZBMS 2018 レポート
八尋 雄平(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 医療関節材料開発講座)
紹介演題 [1]
Factors secreted from MLO-Y4 osteocyte-like cells under inflammatory conditions inhibit C2C12 myoblast differentiation
キーワード
骨癒合, C2C12、MLO-Y4
研究グループ
Dorit Naot, Maureen Watson, Ally Choi, David S. Musson, Jillian Ciornish
- Department of Medicine, University of Auckland, Auckland, New Zealand
サマリー&コメント
骨と筋肉は共通の間葉系前駆細胞より分化することが知られている。骨折周囲の筋細胞は骨折治癒過程を補助する働きを有する。特に骨膜損傷まで来すような軟部組織損傷では筋組織の果たす役割が大きい。早期骨折治癒過程中の炎症環境下では骨細胞からの分泌物が筋分化に関与することで、骨癒合過程に影響を与えるのではないかとの仮説を立て実験を行った。
IL1β存在下では筋芽細胞株C2C12の筋分化が抑制された。同じくIL1β存在下にC2C12と骨芽細胞様株MLO-Y4と共培養化を行うと筋分化はさらに強力に抑制されるという結果が染色でのfusion indexから得られた。同様の結果はC2C12単培養に比べ、共培養を行うと筋分化マーカーの発現が低下することがマイクロアレイでも確認された。さらにPCRでもIL1βやTNFα存在下で、C2C12単培養に比べMLO-Y4との共培養は筋分化が抑制されるとの結果が得られた。
一方でマウスから採取した初代骨芽細胞とC2C12との共培養では筋分化に影響は与えなかった。そこでマウスcalvariaeから樹立したMOB細胞株とMLO-Y4でのIL1β存在下での発現に違いが認められる遺伝子をマイクロアレイで検出したところ5つの遺伝子が検出された。この5つの遺伝子を介してC2C12の筋分化に影響を与えているのではないかということが示唆された。
それぞれの遺伝子についての実験が行われておらず候補として挙げられていただけであり、今後の結果が期待される。骨折治療に対しての臨床応用が可能な実験と感じられ興味を持った。
紹介演題 [2]
Prior facture is associated with low bone material strength index in men
キーワード
BMD, IMI, BMSi
研究グループ
Pamela G Rufus1, Kara L Holloway-Kew1, Adolfo Diez-Perez2, Mark A Kotowicz1,3,4, Julie A Pasco1,3,4
- 1. Deakin University, Geelong, VIC, Australia.
- 2. Department of internal Medicine, Hospital del Mar- IMIM, Autonomous University of Barcelona and CIBERFES, Instituto Carlos Ⅲ, Spain.
- 3. Department of Medicine-Western Health, The University of Melbourne, VIC, Australia
- 4. Barwon Health, Geelong, VIC, Australia
サマリー&コメント
BMDは骨折のリスクを評価するうえで重要な因子であるが、BMDだけでは説明できないような骨折も数多く見受けられる。impact microindentation(IMI)はbone material strength index(BMSi)を測定する装置として開発されたが、実際の骨折との因果関係は不明な点が多い。そこで過去に軽微な外傷での骨折歴のある男性とBMSiとの関係について調査を行った。
骨折歴のある26名の男性と骨折歴のない240名の男性ではBMSiはそれぞれ80.4(78.2-82.6)と83.1(82.4-83.9)であり、有意差が認められた(p=0.04)。また年齢やBMIでの補正を行った結果でも有意差が認められた(P=0.04)。一方で大腿骨頸部でのBMDは有意差が認められなかった。
今後も様々な骨折リスクの指標が提唱されていくと思われるが、本法もその候補として考えられる。