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ANZBMS 2018 レポート
根岸 香菜(株式会社カン研究所)

根岸 香菜

紹介演題 [1]
OR2 Amgen-ANZBMS Outstanding Abstract – Basic Presentation SLC37A2 is an endolysosomal transporter critical for osteoclast function during bone remodelling.

キーワード

Slc37a2、破骨細胞、大理石病

著者

Nathan Pavlos

  • The University of Western Australia
サマリー&コメント

輸送タンパク質の主要なファシリテータースーパーファミリー(MFS)は、細胞内オルガネラの膜に広範囲に存在する基質交換に重要であることが知られている。演者らは、破骨細胞の破骨細胞分化中に発現が強く増強され、骨吸収機能に重要なエンドリゾソーム輸送体として、Slc37a2を同定した。 Slc37a2は、Slc37a1、a2、a3およびa4の4つの構造的パラログからなるMSF関連糖リン酸トランスポーターであり、破骨細胞におけるSlc37a2の局在を調べたところ、Scl37a2はエンドリソソーム膜分子LAMP1, VAMP7と共局在していた、Slc37a2 ノックアウト(KO)マウスの破骨細胞は波状縁形態をとれずに機能不全を起こし、骨吸収能も低下した。Slc37a2をノックアウト(KO)したマウスでは骨量が増加し、大理石骨病を起こした。一方で、Slc37a2 KOマウスの骨芽細胞は影響を受けなかった。Scl37a2は大理石骨病の診断において有用である可能性が示さされた。
演者らの別の学会(CBSM2018)においてマクロファージにおけるエンドリソソームの貨物内在化および輸送に影響を及ぼさないと報告している。破骨細胞は単球や樹状細胞から分化すると言われているので、この違いは興味深い。

紹介演題 [2]
OR3 Continued fracture risk reduction after 12 months of romosozumab followed by denosumab through 36 months in the phase 3 FRAME (FRActure study in postmenopausal woMen with ostEoporosis) extension.

キーワード

モロソズマブ、デノスマブ、骨粗しょう症

著者

Peter Ebeling

  • Monash University
サマリー&コメント

スクレロスチンに結合して阻害活性を示す抗体であるロモソズマブは、骨形成を増加させ、骨吸収を減少させるという二重の効果を有する骨形成剤であると言われている。本発表では、骨粗鬆症を有する閉経後の女性を対象にロモソズマブまたはプラセボを1年間投与したのち、デノスマブを1-2年間投与するFRAME studyの結果について報告があった。ロモソズマブを1年間投与した後、デノスマブへの移行時に骨折リスクを評価したところ、脊椎・股関節・椎骨において骨折数が減少した。また、BMDが増加し、その後の骨折リスクの持続的な低下も認められ、ロモソズマブは1年間の投与期間で有効性が確認された。さらに、ロモソズマブからデノスマブへ移行した場合も、プラセボからデノスマブへ移行した群と比較して、椎骨における骨折リスクの有意な低下が認められた。さらにデノスマブ投与後1年後にBMDの増加が認められた。デノスマブ投与後1, 2年後に観察された副作用はいずれもプラセボ群と差がなかった。
この結果から、発症初期からのロモソズマブの骨折治療効果に期待が持てる印象を受けた。ある程度治療効果としてニーズが満たされつつある本疾患において、今後はデノスマブなどとの差別化、抗体の特徴付けなどが必要になるのかもしれないと感じた。

紹介演題 [3]
OR4 A randomised alendronate-controlled trial of romosozumab: Results of the Phase 3 ARCH study (Active-contRolled fraCture study in postmenopausal women with osteoporosis at High risk).

キーワード

骨粗しょう症、モロソズマブ、アレンドロネート

著者

Kenneth Saag

  • USA
サマリー&コメント

本発表は、アムジェンが行ったphase III試験ARCH studyの結果報告であった。本試験では、骨粗しょう症と脆弱性骨折を有する閉経後の女性4093名を対象にロモソズマブまたはアレンドロネートを12か月投与した後、さらに12か月間両群にアレンドロネートを投与したところ、ロモソズマブからアレンドロネートに移行した群において、椎体骨折、臨床骨折、非脛骨骨折さらに股関節骨折リスクを抑制できることが明らかとなった。有害事象は同程度の頻度で起きたが、重篤な心血管系事象はロモソズマブからアレンドロネートに移行した群において多く認められた。アレンドロネート単独よりもロモソズマブからアレンドロネートに移行した群において、新規の骨折リスクが少ないことが分かった。
抗体医薬からビスホスホネート薬剤への切り替えによって関節リスクが低減するというデータは興味深いが安全性に対する注意が必要である。対象年齢が高い本疾患においては、高い安全性や骨折リスク低減の維持等が重要ということかもしれない。初期に抗体医薬で病状を抑えることで、その後は維持療法へのスイッチが可能であれば、治療選択肢の幅が広がる可能性があると感じた。

根岸 香菜