日本骨代謝学会

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ANZBMS 2018 レポート
永田 向生(東京大学 整形外科 医学系大学院)

永田 向生

紹介演題 [1]
Biochemical profiling of MRI detected bone marrow lesions in knee osteoarthritis patients: altered mineralization of the subchondral bone matrix

キーワード

Subchondral bone marrow lesions、knee osteoarthritis、Raman spectra

研究グループ

Julia Kuliwaba,Yea-Rin Lee, Dzenita Muratovic, David Findlay

  • The University of Adelaide
サマリー&コメント

人工関節を受けた24例のOA患者と、controlとして8例の非OAをカダバーから、脛骨関節面を採取した。MRIのT1強調像と脂肪抑制像で、軟骨下骨髄病変(BML)を検討した。この全32例を、OA-noBML群, OAありでBML1型群(脂肪抑制像で内側の損傷を確認)、OAありでBML2型群(脂肪抑制とT1強調像で内側の損傷を確認)、非OAのcontrol群、の4つに8例ずつ分類し、ラマン分光法で検討を行った。

骨基質はOA-noBMLとcontrol群で同様であった。しかし、phosphate/amide IはOA-BML1型, OA-BML2型で減少していた。さらに内側と外側を比較しても内側で低かった。phosphate/prolineはOA-BML1型で低かった。骨石灰化密度分布はOA-BML1型, OA-BML2型で低下していた。OA群とcontrolでプロテオグリカン量、ヒドロキシプロリン/プロリンは差がなかった。

ラマン分光法とは、入射光と異なった波長をもつ光(ラマン散乱光)の性質を調べることにより、物質の分子構造や結晶構造などを知る手法であるが、この方法とMRIとの結果を複合した報告である。OA患者においてはラマン分光の結果が非OAの骨に対して異なっていた。BMLが骨のダメージに対してリモデリングが進んでいることを証明するデータであり、骨の損傷・OAの前駆状態をラマン分光法で確認出来ることが示唆された。臨床においては手術中に用いることのできるデバイスとして、また基礎においては動物実験でも対象に苦痛を与えることなく継時的に骨の評価ができる手法として普及する可能性があると思われました。

紹介演題 [2]
Denosumab treatment in women with osteoporosis rapidly prevents deterioration in trabecular microstructure at the distal tibia

キーワード

Denosumab, whole bone stiffness, finite element analyses

研究グループ

Ego Seeman1, Bin Zhou2, Ji Wang2, Arkadi Chines3, Yifei Shi3, Andrea Wang3

  • 1. Austin Health
  • 2. Department of Biomedical Engineering Columbia University
  • 3. Amgen
サマリー&コメント

Denosumabによる治療は速やかに骨のリモデリングと破骨細胞の骨吸収能を抑制する。個々の小柱構造解析(ITS)は骨の微細構造を定量評価することができる。本研究ではDenosumab治療をITSと有限要素法解析と組み合わせて骨剛性を評価した。

販売後調査フェーズ2において、骨密度が低下した閉経後女性164例を、プラセボまたはDenosumab 60mg/6ヶ月毎にランダム化して評価した(82例vs82例)。被験者は、ベースラインの腰椎または全股関節BMDのTスコアが-2.0〜-3.0であった。微細構造および全骨剛性に対するDenosumab治療効果を、ベースラインおよび12ヶ月後におけるITSおよびFE解析を用いて定量化した。遠位脛骨における個々のITSおよびFEパラメータは、年齢、BV / TVおよびベースラインパラメータ値を調整するANCOVAモデルを使用して、12ヶ月目のベースラインからの変化率を比較した。

平均年齢61歳・閉経後平均13年、BMI 27.1 kg/m2、平均T-scoreは腰椎で-2.4、hipで-1.2であった。遠位脛骨において、デノスマブ治療は、治療前と比較して、plate 様(板状) 構造の厚さを増加し、プラセボ群で見られるrod 様(柱状)構造の増加や骨希薄化を防止した。微細構造のintegrityのマーカーであるplate/rod比は治療前と比較して、プラセボ群で有意に減少して、Denosumabu群で保存された。Denosumab治療は、骨梁構造の増加を含め、プラセボと比較して、すべての微細構造パラメータの低下または改善を防いだ。

Denosumabuは骨密度低下を伴った閉経後女性での遠位脛骨の評価においては急激な骨量構造の低下を予防した。市販後調査でありあまり副作用の報告に重点が置かれていなかったが、多数の患者の骨微細構造を精査した報告であった。

永田 向生