骨ルポ
JSBMR×医薬ジャーナル社共同企画
ASBMR 2017 シニアレポーター レポート
福本 誠二(徳島大学先端酵素学研究所藤井節郎記念医科学センター)
2017年のASBMRでも,骨粗鬆症治療薬に関する多くの演題が報告された。特に,デノスマブの長期使用により骨折リスクがより低下すること,アバロパラチドやロモソズマブ使用後に骨吸収抑制薬を使用することが有用であることが示された。骨粗鬆症に対する薬剤開発が一段落ついた感があることから,骨以外の運動器に対する研究の進展,薬剤開発が期待される。
はじめに
2017年のASBMRは,9月8日から11日まで,デンバーのコロラドコンベンションセンターで開催された(写真1,2)。デンバーでの開催は,2009年に引き続き2回目である。Cellular senescenceと題されたJudith Campisi教授によるGerald D. Aurbach Lectureに始まり,例年通り多くの先進的研究が発表された。ちなみに本学会では,老化が一つのキーワードと考えられた。老化に伴う骨量減少の発症に老化細胞が重要であるとのメイヨークリニックからの発表(#1042)は,既に論文として発表されている(Farr JN, et al:Nat Med 23:1072, 2017)。以下本稿では,骨粗鬆症治療薬についての臨床的話題を取り上げる。
(写真1)
(写真2)
デノスマブ
2016年の本学会で,デノスマブの10年間までの使用が骨量の持続的増加を惹起することが報告され,2017年に論文として公表された(Bone H, et al:Lancet Diabetes Endocrinol 5:513, 2017)。2017年の学会では,無作為化二重盲検試験であるFREEDOM試験の3年間に比較し,デノスマブのより長期の使用が非椎体骨折をさらに減少させることが発表された(#1073)。さらにデノスマブは,生検で評価した腸骨皮質骨の内骨面浸食面や破骨細胞面,浸食深度を減少させること(#1111),橈骨海綿骨の微細構造のパラメーターを改善すること(#1033)などが報告された。これらの成績も,ビスホスホネート製剤とデノスマブの作用機序が異なることを示している。
アバロパラチド
副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)のアナログであるアバロパラチドは2017年に米国で臨床応用された。本学会では,無作為化二重盲検試験である18カ月のACTIVE試験の後,アレンドロネートを2年間使用するACTIVExtend試験の結果が報告された。ACTIVE試験中にアバロパラチドを投与された群では,プラセボであった群に比較し,腰椎,大腿骨頸部,大腿骨近位部の骨密度増加量が大きく(MO0655),椎体,非椎体,臨床,および主要骨粗鬆症骨折が少なかった(#1074)。従って,アバロパラチドの効果は,その後のアレンドロネートの使用により維持されることが明らかとなった。
ロモソズマブ
ヒト型抗スクレロスチン抗体であるロモソズマブは,新規骨粗鬆症治療薬として期待されている。本学会では,無作為化二重盲検試験である12カ月のFRAME試験に引き続き,24カ月デノスマブを使用する延長試験の結果が報告された。FRAME期間中にロモソズマブを投与された群はプラセボであった群に比較し,腰椎や大腿骨頸部,大腿骨近位部の骨密度が高く,新規椎体,臨床,および非椎体骨折のリスクが低いことが示された(#1071)。従って,使用期間が限定されるものと予想されるロモソズマブの後に,デノスマブによる治療が有用であると考えられた。また,投与後2カ月と12カ月の生検による検討で,ロモソズマブは早期に骨形成の促進を,また持続的に骨吸収の抑制を惹起することが明らかとなった(#1072)。
さらに本学会では,4,093名の骨粗鬆症閉経後患者を対象とし,初めの1年間にロモソズマブかアレンドロネート,その後1年間全例にアレンドロネートを投与するARCH試験の結果も報告された。その結果,ロモソズマブの後にアレンドロネートを投与された群は,アレンドロネート2年間群に比較し,骨密度の増加が大きく,新規椎体,臨床,非椎体,および大腿骨近位部骨折が少ないことが明らかとなった(#LB1162)。ただし,12カ月の時点で心血管有害事象がロモソズマブ群に多かったと報告された。本成績は,直後に論文として発表されている(Saag K, et al:N Engl J Med 377:1417, 2017)。昨年の本学会では,心血管有害事象によりオダナカチブの臨床開発が中止されたことが大きな話題であった。ロモソズマブによる心血管有害事象については,現在さらに検討が進められている。
おわりに
本学会では,骨に加え筋肉関連の演題も多く認められた。現状では骨粗鬆症に対する薬剤開発が一段落ついた感があり,今後は骨以外の運動器に対する研究の進展,薬剤開発が期待される。