日本骨代謝学会

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ASBMR 2017 レポート
中野 将志(広島大学大学院医歯薬保健学研究科)

中野 将志

紹介演題 [1]
RNA-Seq Based Transcriptome Profiling and Transformation of Mature Osteoblasts into Bone Lining Cells during Bone Loss Induced by Mechanical Unloading

キーワード

成熟骨芽細胞, 形質転換, トランスクリプトーム解析

研究グループ

A Ram Hong1,Kwangsoo Kim2, Jae-yeon Yang2, Ji-yeon Lee2, Kyoung Min Kim3, Jung Hee Kim1, Chan Soo Shin1, Sang Wan Kim4

  • 1. Seoul National University College of Medicine, Korea
  • 2. Seoul National University Hospital Biomedical Research Institute, Korea
  • 3. Seoul National University Bundang Hospital, Korea
  • 4. Seoul National University College of Medicine, Seoul Metropolitan Government Boramae Medical Center, Korea
サマリー&コメント

機械的負荷軽減による骨量の減少に関し,いくつかの経路や分子の報告があるものの,そのメカニズムの詳細は依然として不明である。
本研究では,DMP1-CreERt2 (+) : Rosa26Rマウスにタモキシフェンを投与した骨芽細胞からlining cellのリネージトレース実験系を用いた。同マウス左側後肢の腱切断,ボツリヌス毒素投与により機械的負荷を軽減し,左側後肢の大腿骨量の減少を誘導した。これより,骨損失の初期段階においての機械的負荷軽減が,成熟骨芽細胞のlining cellへの形質転換を加速させることを示した。さらに,コントロールマウスとの間に差異的に発現したタンパク質コード転写産物を同定し,これらの遺伝子をクラスター化した。
これまでに我々の研究グループも骨芽細胞系譜の分化に関するトランスクリプトーム解析の結果を報告しており,共通する部分もあり大変参考になった。

紹介演題 [2]
Identification of Murine Circulating CD34+ OCN+ Cells

キーワード

間葉系幹細胞, 造血幹細胞, CD34

研究グループ

Ryan Kelly1, Lindsay McDonald2, James Cray1, Amanda LaRue2

  • 1. Medical University of South Carolina, United States
  • 2. Ralph H. Johnson Department of Veterans Affairs Medical Center, United States
サマリー&コメント

間葉系幹細胞(MSC)は中胚葉由来の骨・軟骨系統へ分化し,造血幹細胞(HSC)は血球系細胞へ分化するとされてきたが,HSCが非造血系細胞産生に関与するとの報告もあり,本グループはHSCの骨形成能を検討している。
CD34は様々な体性幹細胞の表面マーカーであり,骨髄由来の造血幹細胞/血管内皮前駆細胞等に発現している。本研究では,フローサイトメトリーによってマウスの循環CD34+ OCN+ 細胞を同定し,VavRダブルトランスジェニックマウスを用いてそれらの細胞が造血幹細胞由来であることを確認した。加えて脛骨骨折マウスを用いて、骨折の3週間後に循環CD34+ OCN+ 細胞発現がピークを示し、仮骨形成および初期石灰化に関与することを示した。これらの細胞はAMD3100(10mg/mL)での処置の3日後に誘導されることを確認した。
これらより,骨髄由来幹細胞が骨髄から出て血流内を通り損傷部位に定着可能であることが示唆され,CD34+ OCN+ 細胞の増加が骨折治癒結果の改善と相関すると仮定し,さらなる研究が進められている。
本グループの研究が新たな治療法確立の足がかりとなると期待される。

中野 将志