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ASBMR 2017 レポート
武鑓 真司(大阪大学大学院医学系研究科小児科学)

武鑓 真司

今回、ASBMR2017では骨形成不全症(OI)に関する研究成果を発表しました。同疾患に関する他の発表についてご紹介させて頂きます。

紹介演題 [1]
Identification of the mechanism underlying growth deficiency in osteogenesis imperfecta

キーワード

骨形成不全症, 軟骨細胞

研究グループ

Satoru Otsuru, et al.

  • Center for Childhood Cancer and Blood Diseases, The Research Institute at Nationwide Children’s Hospital, College of Medicine, The Ohio State University
サマリー

OIの症状の一つである低身長について、未だその機序が明らかでないため、OIモデルマウス(G610C)の軟骨を用いて実験を行った。OIモデルマウスではgrowth plateの幅が広がっており、肥大化軟骨細胞が適切に排除されていないことが観察された。さらに、肥大化軟骨細胞内にはI型コラーゲンが蓄積し小胞体ストレスが引き起こされていた。以上から、変異I型コラーゲンが肥大化軟骨細胞内に蓄積することで肥大化軟骨細胞が正常に機能せず、growth plateを障害するため低身長をきたすと考えられる。

コメント

OIはI型コラーゲンの異常による疾患のため、骨芽細胞を用いた研究ばかりが行われていますが、本演題は軟骨細胞へのアプローチにより病態解明を目指しており、着眼点が面白いと思いました。

紹介演題 [2]
Combination Therapy with Anti-TGF-Beta Antibody and a Mutation in Lrp5 Improves Trabecular Bone Properties In Mice with Osteogenesis Imperfecta

キーワード

骨形成不全症, RP5, 抗TGFβ抗体

研究グループ

Shannon Kaupp, et al.

  • Boston Children’s Hospital, United States
サマリー

抗TGFβ抗体はOIモデルマウスの骨密度を改善することが示され、一方、LRP5の機能喪失型変異は骨量増加をきたすことが知られている。TGFβとLRP5経路を標的とした治療を併用することにより、高い治療効果が得られるのではと考え実験を行った。OIモデルマウス(G610C)とLrp5遺伝子変異を持ち高骨量を示すHBMマウスを掛け合わせることでOI+HBMマウスを作成し、各マウスに抗TGFβ抗体を投与した。OI+HBMマウスへのコントロール抗体投与群、もしくはOIモデルマウスへの抗TGFβ抗体投与群よりも、OI+HBMマウスへの抗TGFβ抗体投与群では大腿骨・脊椎の海綿骨の骨量が増加することがmicroCTで確認された。一方、三点曲げ試験では最大荷重も破断変位も両群と比較してOI+HBMマウスへの抗TGFβ抗体投与群で改善はみられなかった。内因性のLRP5阻害剤である抗スクレロスチン抗体は骨粗鬆症に対して、抗TGFβ抗体はOIに対して臨床試験が進行中であり、両剤を併用することで単剤より治療効果が得られる可能性がある。

コメント

現在OIに対する治療薬はビスフォスフォネート製剤しか使用されていませんが、この演題以外にもOIの新たな治療薬に関する演題が複数あり、OIに対する薬物治療の進歩を感じました。

武鑓 真司