骨ルポ
ASBMR 2017 レポート
髙橋 晃(東京医科歯科大学医学部付属病院整形外科)
大学の大先輩である小野法明先生(左)とYoung Investigator Awardの受賞式にて
紹介演題 [1]
The association between type 2 diabetes mellitus, hip fracture, and post-hip-fracture mortality: a multi-state cohort analysis
キーワード
2型糖尿病, 大腿骨近位部骨折, 骨折後死亡率
研究グループ
Cristian Tebé
- Statistical Assessment Service at Bellvitge Biomedical Research Institute (IDIBELL)
サマリー&コメント
これまでの研究から、2型糖尿病(以下T2DM)が大腿骨近位部骨折のリスクを上昇させることが示唆されている。その一方で、T2DMの骨折後死亡率への影響についての詳細な検討はほとんどされていないのが現状である。本研究結果からはT2DM患者では大腿骨近位部骨折のリスクが30-50%も上昇すること、骨折後の死亡率が30-70%程度も上昇することが判明した。さらには、骨折を罹患しなかった場合の死亡率についてもT2DM患者では40-85%程度のリスク上昇を認める結果となった。整形外科医が最もよく遭遇する疾患の一つである大腿骨近位部骨折について、T2DMの影響を調査した研究である。私自身T2DMが骨折リスクを高める危険因子との認識はありましたが、T2DMの死亡率への影響に関しては意識したことがなく、本研究を大変興味深く感じました。
紹介演題 [2]
The Effect of Bisphosphonates on Mortality Risk Reduction is Partly Mediated Through a Reduction in the Rate of Bone Loss
キーワード
ビスホスホネート, 死亡率, 骨量
研究グループ
Dana Bliuc
- Osteoporosis and Bone Biology Program, Garvan Institute of Medical Research
サマリー&コメント
ビスホスホネート(以下BP)は強力な骨吸収抑制薬であり、骨粗鬆症における第1選択薬の一つである。先行研究においてBPと死亡率低下の関連性が報告されている。本研究はカナダで行われた多施設共同でのケースコントロール研究であり、その目的はBPが骨量低下の抑制を媒介して死亡率を低下させているかどうかを調べたものである。結果であるが、女性においてはBP内服群でリスク比0.63と有意な死亡率低下を認めた一方で、被験者数の少ない男性では死亡率に有意差を認めなかった。また、BP内服群では骨量低下が男女共に有意に低かった。著者らは媒介解析にBPと骨量低下率を同時に加え、BPと死亡率低下の関連性の約30%は骨量低下の抑制にあると結論付けた。BPに骨量低下の抑制作用があることは自明な事であるが、BP内服によって死亡率低下という恩恵まで享受できる可能性があることは私にとって非常に驚きであった。本研究結果を短絡的に解釈してはならないが、骨粗鬆症の診断を受けていながらBP内服を拒む私の母に対してBP内服を強く勧める理由の一つになるかもしれない。
大学時代の先輩と名古屋大学整形外科の先生方と