日本骨代謝学会

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ANZBMS 2017 レポート
宮岡 大知(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学)

宮岡 大知

紹介演題 [1]
Anti-resorptive therapy compromises bone’s material composition predisposing to atypical femoral fractures

キーワード

非定型大腿骨折 (AFF)、cortical porosity、matrix mineral density (MMD)

研究グループ

Roger Zebaze1, Cherie Y Chiang1, Hanh Nguyen2, Yu Peng3, Ali Ghasem-Zadeh1, Xiao-Fang Wang1, Sandra Iuliano-Burns1, Maria B Zanchetta4, Jose R Zanchetta4, Peter R Ebeling2, Ego Seeman1, 5

  • 1. Departments of Endocrinology and Medicine, Austin Health, University of Melbourne, West Heidelberg, VIC, Australia
  • 2. Department of Medicine, Monash University, Melbourne, VIC, Australia
  • 3. Straxcorp, Melbourne, VIC, Australia
  • 4. Instituto de Diagnóstico e Investigaciones Metabólicas (IDIM), Buenos Aires, Argentina
  • 5. Institute for Health and Ageing, Australian Catholic University, Melbourne, VIC, Australia
サマリー&コメント

【背景】骨吸収薬による治療は骨微細構造の劣化を遅らせる。一方で、新たな骨形成の抑制により微細な損傷が蓄積され、完全な石灰化により容易にその損傷が拡がる可能性がある。我々は、治療中に非定型大腿骨折 (AFF)を起こした女性は、治療により骨微細構造の劣化は抑えられているがmatrix mineral density (MMD)が高くなっているという点で、AFFを起こしていない女性と異なるのではないかという仮説を立てた。
【方法】健康な342例の閉経前女性、55例の閉経後女性および109例の骨吸収薬治療中の女性 (49例でAFF、29例で脆弱性骨折を認めた)に対し、橈骨遠位端の皮質骨多孔化 (cortical porosity)およびMMDを、HRpQCTを用いて測定した。porosityおよびMMDの劣化は、StrAx Indexを用いてMaterial Fragility Score (MFS)として定量化した。
【結果】健康な女性ではporosityとMMDは負に関連したが、AFFを認めた治療女性では相関しなかった。AFFを認めた治療女性は、AFFを認めなかった治療女性と比較して、porosity は有意に低く (0.88 ± 0.26 SD)、MMDは有意に高かった (0.68 ± 0.17 SD)。 MFSを用いると、AFFを認めた治療女性は、 AFFを認めなかった治療女性 [OR= 5.7, 95%CI 2.5.1-12.9, P< 0.0001, 感度 77.4%, 特異度 65.4%] および未治療女性 [OR= 7.5, 95% CI 3.1-18.2, P< 0.0001, 感度 80%, 特異度 65.3%]と区別することが可能であった。
【結論】cortical porosityとMMDともに高値である場合、典型的な脆弱性骨折のリスクとなるcortical porosity高値かつMMD低値の女性から、AFFのリスクがある女性を区別でき、標的治療の一助となるかもしれない。
【コメント】ビスホスホネート製剤長期使用における休薬の是非は、リスクベネフィットの兼合いで個々に検討されるが、AFFのリスクを定量化できることは判断基準のひとつとして有意義であると思った。

紹介演題 [2]
Association between deterioration of cancellous bone microstructure and glucose metabolism indices in healthy postmenopausal women.

キーワード

Trabecular bone score (TBS)、2型糖尿病、HbA1c

研究グループ

Kiyoko Nawata1, 2, Mika Yamauchi1, Masahiro Yamamoto1, Toshitsugu Sugimoto1

  • 1. Internal Medicine 1, Shimane University Faculty of Medicine, Izumo, Shimane, Japan
  • 2. Health and Nutrition, The University of Shimane, Matsue, Shimane, Japan
サマリー&コメント

【背景】Trabecular bone score (TBS)は海綿骨微細構造の指標であり、その低下は骨密度とは独立して椎体骨折のリスクであることが知られている。また、2型糖尿病女性では骨密度は保たれているがTBSが低下しており、TBS低値は骨折のリスク因子として報告されている。しかし、健常人におけるTBSと糖代謝指標の関連は明らかではない。
【方法】骨粗鬆症検査を受けたHbA1c 6.2%以下の健康閉経後女性214例を対象とし、血液検査にて空腹時血糖 (FPG)、HbA1c、Ca、P、Cr、PTH、25OHD、P1NP、CTXを測定した。DXAを用いて腰椎 (L2-4)および大腿骨骨密度を測定、L1-4でTBSを算出した。
【結果】平均年齢63.2歳、BMI 22.7kg/m2、FPG 90mg/dL、HbA1c 5.6±0.3%、PTH 45.5pg/mL、25OHD 16.3 ng/mL、BMD 0.846±0.146 g/cm2 (Z score 0.3±1.0)、FN 0.620±0.093 g/cm2 (Z score 0.1±1.0)、TBS 1.317±0.073であった。TBSは、年齢、PTHおよびHbA1cと負の、BMDおよび25OHDと正の有意な関連を認め、年齢、BMI、FN-BMDで調整後もHbA1cと有意な負の関連を示した。また、HbA1cとTBSともに高値の群と比較して、HbA1c高値かつTBS低値の群では、有意に骨折率が高かった。
【結論】閉経後女性において、ごく軽度の耐糖能異常は正常範囲であっても、海綿骨微細構造の劣化に寄与することが示唆された。
【コメント】Holloway, KLらもTBS低値はIFG (空腹時高血糖)と関連したが年齢等で調整後は有意にならなかったことを報告していたが、境界型群におけるTBSと関連する糖代謝指標としては、HbA1cの方がより有用であったことはIGTを反映しているのか、CGMから得た他の血糖変動指標との関連も注目すれば興味深いのではないかと思った。