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ANZBMS 2017 レポート
天真 寛文(徳島大学大学院口腔科学教育部 口腔顎顔面矯正学分野)

天真 寛文

紹介演題 [1]
Understanding the actions of bisphosphonate drugs: inhibitory effects on macrophage populations outside the skeleton

キーワード

Bisphosphonate, Tumour-Associated Macrophages (TAMs)

著者

Marcia A Munoz1, Julie Jurczyluk1, Niall Byrne1, Simon Junankar1, Hristo Zlatev2, Seppo Auriola2, Tri Phan1, Michael J Rogers1

  • 1. Garvan Institute of Medical Research, Darlinghurst, NSW, Australia
  • 2. University of Eastern Finland, Kuopio, Finland
サマリー&コメント

ビスホスホネート製剤(BP)は骨吸収を抑える目的で使用されるが、この演題ではBPsのがんに対する効果について検討を行っている。私は歯学部に所属しており、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)の発症メカニズムについて関心があるので、BPsが骨以外に与える多面的な効果に着目しているという点でこの演題に興味を持った。
イメージングを用いて乳がん組織でのゾレドロン酸(ZOL)の動態を観察したところ、静注したZOLが血管から外に出て、微小石灰化物に結合し蓄積していた。微小石灰化物に蓄積したZOLの結合物が、がんの進展を促進するとされている腫瘍関連マクロファージ(TAM)によって取り込まれていた。乳がん組織においてTAMによって取り込まれたZOLが細胞障害活性を有するのかを、Rabのプレニル化に着目して検討したところ、リポソームに封入したZOLは効率よくTAMに取り込まれTAMのRabプレニル化を阻害したが、微小石灰化物に結合したZOLは遊離ZOLとしてあまり放出されず、TAMのRabプレニル化を阻害しなかった。BPは抗腫瘍効果を有する可能性があるが、BPの腫瘍微小環境への影響に関しては今後さらなる検討が必要である。また、多発性骨髄腫の病変内のTAMは低濃度の遊離ZOLによってRabプレニル化が阻害されていたことより、がん種によってTAMのBPへの感受性が異なる可能性がある。
BPのマクロファージへの取り込みや、取り込まれたBPがマクロファージの機能に対してどのような影響を与えるのかは非常に興味深く、BRONJにおいてもこのようなマクロファージへの効果が関係している可能性があるのではないかと感じた。

紹介演題 [2]
Immune aging as a risk factor for inflammatory disease

キーワード

Rheumatoid arthritis, T cell, Aging

著者

Cornelia Weyand

  • Stanford University, Stanford, California, USA
サマリー&コメント

加齢に伴い免疫系は変化していくが、特にT細胞は加齢による変化を受けやすいことが知られている。この演題ではT細胞の老化のメカニズムを明らかにすることを目的とし、間接リウマチ(RA)をモデルとして用い検討を行っている。
RA患者のT細胞では、解糖酵素PFKの抑制が起こっており、グルコース代謝がペントースリン酸経路に迂回されて行われ過剰なNADPHが生成されていた。その結果ATMの欠乏が生じ、ATMが欠乏したT細胞には細胞周期チェックポイントの異常が引き起こされていた。この細胞周期チェックポイントの異常により、T細胞が過剰増殖し老化が早められていた。そして、炎症を悪化させるIFN-γやIL-17を産生するT細胞への分化にもこの細胞周期チェックポイントの異常が関係していた。また、RA患者のT細胞の特徴としてテロメアの損傷が挙げられるが、この変化にはDNA修復酵素であるMRE11Aの関与が考えられ、MRE11Aが発現低下しているT細胞は関節へ盛んに集まり炎症を引き起こしていた。
これらの結果より、PFKやMRE11Aの発現が低下することでT細胞の老化ならびに炎症反応を引き起こすT細胞への分化が促進されることが示唆された。この二つの分子を標的にすることで、今後T細胞の老化によって引き起こされる炎症性疾患を予防する新たな戦略の開発に発展することが期待できる。