日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨ルポ

TOP > 骨ルポ > ANZBMS 2017 > 竹野 歩

ANZBMS 2017 レポート
竹野 歩(島根大学医学部内科学講座内科学第一)

竹野 歩

紹介演題 [1]
The effects of adiponectin deficiency on osteoclasts

キーワード

破骨細胞、AMP-activated protein kinase

研究グループ

Jian-ming Lin, Dorit Naot, Jillian Comish

  • Department of Medicine, University of Auckland, Auckland, N/A, New Zealand
サマリー&コメント

Adiponectin (APN) はアディポカインの一つであり、インスリン感受性を高める作用がある。一方、APNが骨に及ぼす影響については一定の見解がなかった。発表者らはAPN knockout (APN-KO) miceを用いてAPNが破骨細胞分化に与える影響を検討している。APN-KO miceでは骨密度が減少していた。Bone mallow (BM) culturesを用いた検討においてAPN-KOでは野生型に比べ破骨細胞分化が増加していた。APN発現を促進するロシグリタゾンやステアリン酸はBM culturesにおける破骨細胞分化を抑制したが、この効果はAPN-KOでは減弱していた。このことから、ロシグリタゾンおよびステアリン酸の破骨細胞分化抑制は部分的にではあるがAPN発現増加を介していると考えられた。また、APN-KOの白色脂肪組織において野生型に比べRANKL、TNF発現が著明に増加していた。これらの結果から、APNはRANKLやTNFの発現を低下させ破骨細胞分化を抑制することが示唆された。2型糖尿病ではAPN分泌低下を認める。骨粗鬆症は2型糖尿病の重要な合併症であり、この骨脆弱性の機序にAPN作用低下が関与している可能性が考えられる。発表者らの研究などを通じて2型糖尿病で認める骨代謝異常の病態解明や新たな治療法の開発につながることが期待される。

紹介演題 [2]
Osteocytes and mechanosensory pathways

キーワード

骨細胞、sclerostin、mechanical stress

研究グループ

Teresita Bellido

  • Indiana University School of Medicine, Indianapolis, INDIANAPOLIS, United States
サマリー&コメント

骨細胞はsclerostinを産生し骨芽細胞のWNT/β cateninシグナルを阻害することで骨形成を抑制する。Parathyroid hormone (PTH)やmechanical stressは骨細胞のsclerostin発現を抑制し骨形成を促進することが報告されている。講演者はこのPTHやmechanical stressによるsclerostin低下について最新の知見を交えて紹介された。Mechanical stressによる骨形成促進は骨細胞特異的にhuman Sostを過剰発現させたマウスでは野生型に比べ低下していた。マウス骨細胞において恒常的に活性化したPTH receptor 1 (PTHR1)を発現させるとsclerostin発現が低下し骨密度が増加した。骨細胞特異的PTHR1 knockout miceではmechanical stressによる骨形成促進作用が低下していた。これらはmechanical stressによる骨形成促がPTHR1シグナルと関連していることを示す興味深い知見であった。Mechanical stressによる骨リモデリングへの影響は未解明な部分も多い。さらなるメカニズムの解明により、不動による骨粗鬆症などmechanical stressと関連のある病態の治療につながることが期待される。