日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨ルポ

TOP > 骨ルポ > ANZBMS 2017 > 右藤 友督

ANZBMS 2017 レポート
右藤 友督(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 口腔インプラント学分野)

右藤 友督

紹介演題 [1]
Local unloading of subchondral bone through loss of articular surface congruity results in a focal increase in bone turnover

キーワード

リモデリング、メカノバイオロジー

研究グループ

Megan E Thomas1, Gareth D Trope2, Eleanor J Mackie1, Chris Whitton1

  • 1. Faculty of Veterinary and Agricultural Sciences, The University of Melbourne, Parkville, Victoria, Australia
  • 2. School of Animal and Veterinary Sciences, Charles Sturt University, Wagga Wagga, New South Wales, Australia
サマリー&コメント

訓練中の競技馬のように高負荷状態にある関節では、骨リモデリングの局所的な抑制が認められる。しかしながら、荷重環境下で損傷を受けた関節は荷重がかかりづらくなることや、損傷自体によってリモデリングが亢進し、リモデリングの抑制と亢進が相殺される。本研究では、関節面の局所的な低負荷がリモデリング亢進の誘因となるかを検索するため、馬手根関節の橈側手根骨表層に欠損を作製したモデルを使用して実験を行った。
実験には、橈側手根骨(Cr)と第三中手骨(C3)で構成される手根関節を用いた。まずCrの一部に外科手術による表層の欠損(15x10㎜)を作製し、術後3週目から8週間の歩行訓練プログラムを課した。Crの欠損作成部位と、それに対向するC3の一部(表層の欠損により非荷重環境)、またCrの健常部位とそれに対向するC3の一部(荷重環境)の計4か所から軟骨下骨サンプルを採取した。偽手術した反対側の足をコントロール群とした。BSEMによる画像解析と凍結切片のTRAP染色による解析を行った。
Crの非荷重部位では、骨代謝回転と破骨細胞数が有意に増大し、対向するC3にも骨代謝回転と破骨細胞数の増大傾向が認められた。Crの荷重部位では、骨代謝回転、破骨細胞数に変化は認めず、対向するC3においては骨代謝回転の低下が認められた。
本実験では、関節面の局所的な非荷重状態において骨リモデリングの亢進を認めた。これは、関節面における局所的な軟骨下骨のリモデリングメカニズムが働くことを示唆している。

本研究では、一つの関節面内で更に局所的な荷重部位、非荷重部位を作製し、骨のリモデリングがどのように制御されるかを検索していました。超局所的な骨の反応ということで、デンタルインプラントと周囲骨に関する私自身の研究と共通する部分もあり大変に興味を持ちました。

紹介演題 [2]
Finding the links between knee injuries and osteoarthritis

キーワード

メカニカルストレス、軟骨細胞

研究グループ

Sophia Leung1, David Musson1, Sue McGlashan2, Jillian Cornish1, Iain Anderson3, Vickie Shim3

  • 1. Bone and Joint Group, Department of Medicine, University of Auckland, Auckland, New Zealand
  • 2. Department of Anatomy and Medical Imaging, University of Auckland, Auckland, New Zealand
  • 3. Auckland Bioengineering Institute, University of Auckland, Auckland, New Zealand
サマリー&コメント

膝関節は、人体で最も複雑な器官の一つであり、最も損傷しやすくもある。膝関節の外傷性損傷は、疼痛と関節のずれを惹起し、関節の負荷環境を変化させ変形性関節症を発症させる可能性がある。この疾患解明のために、これまで3次元培養軟骨細胞に一軸性の機械的刺激を与える研究が行われてきた。しかしながらこのモデルでは、生体と同様の複雑な負荷は再現されていない。本研究では、3次元培養モデルへの複雑な荷重を加えられる多軸荷重装置を開発した。
この新しいモデルにより、細胞形状の変化や細胞の回転角と相関して、機械的荷重がどのように軟骨細胞に影響を及ぼすかを解明する足掛かりに出来る。この装置を使用して、3次元培養細胞へ種類の異なる機械的刺激(圧縮、引っ張り、剪断、これら3つの複合刺激)を与え、軟骨細胞のリモデリング関連遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析した。
その結果、複雑な荷重負荷は、in vivoでの軟骨細胞挙動と同様に軟骨恒常性を促進することを見出した。一方連続負荷は誘導性分解酵素活性を増加させた。これは、臨床的に膝関節傷害後に認められる傾向と同じである。
この装置は、生体における生理的、病的いずれの状態もin vitroで模倣できるシステムである。この装置を利用して、軟骨細胞のメカノバイオロジーに関する研究を強化し、最終的には変形性関節症の発症メカニズムを解明することを目的としている。

骨関連細胞をゲルを用いて3次元培養することで、細胞の形態、機能に変化が生じることが分かっています。本研究グループの方々が開発された多軸性の荷重装置により、培養細胞に与えるメカニカルストレスを多様に調節可能となったことは、in vitroで生体を模倣する上での課題を一つクリアーしたものと考えられます。荷重と骨関連細胞の応答を経時的に観察することができるモデルとして大変興味深い研究であると思いました。

右藤 友1