骨ルポ
ASBMR 2016 レポート
橋本 真奈(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 歯科矯正学分野)
今回、ASBMR2016に参加させていただき、世界トップレベルの研究を肌で感じることができました。私は、骨芽細胞から排出されるコラーゲン細線維を主とする骨基質と骨細胞ネットワークの形成の関連をテーマに発表させていただきましたが、多くの研究者の先生方から質問やご指摘をいただき、とても有意義な学会となりました。
今回の学会を通じて、自分の研究テーマと近い骨細胞や、コラーゲンに関する疾患の一つである骨形成不全症というキーワードに注目しました。
紹介演題 [1]
スクレロスチン抗体を投与することで、宇宙飛行に誘発される骨細胞性骨融解を防ぐ
研究グループ
石原 嘉人先生 ら
- Department of Oral Medicine, Infection, and Immunity, Harvard School of Dental Medicine
サマリー&コメント
WntシグナルのアンタゴニストであるSOSTが骨形成を阻害することは知られていますが、宇宙飛行により骨小腔の大きさが大きくなり、さらに骨小腔周囲の非石灰化度が変化するものの、SOST抗体を投与することでそれらを防ぐことができると判明し、すなわちSOSTが骨細胞性骨融解に関与していることが示唆されました。研究規模の大きさに驚くとともに、スクレロスチンと骨量の減少という注目されるテーマに新たな発見が生まれたということで非常に興味をもちました。骨細胞はまだ不明なことが多い細胞であり、さらに骨量の減少は長寿国である日本においてはことさら注目されるテーマであり、今後もダイナミックな発表が期待されます。私も今後さらなる研究を続けて、未知なる骨細胞の新たな発見ができるよう頑張りたいと思いました。また、身近な先生が国際学会の口演発表をされた姿を拝見し、非常に刺激を受けました。
紹介演題 [2]
骨形成不全症に関する演題
研究グループ
Surasawadee Ausavarat先生 ら
- アメリカ国立衛生研究所
サマリー&コメント
X連鎖性の骨形成不全症において異常なコラーゲン架橋が骨の強度をむしばんでいくという内容が発表されました。私は大学病院で矯正歯科医として治療も行わせていただいておりますが、骨形成不全症の患者さんも担当しており、非常に興味深い分野です。私は今回の学会でコラーゲン細線維の三次元形態計測を行う手法に関しても発表させていただきましたが、今後は骨形成不全症モデルマウスの解析を行い、骨形成不全症に対する治療に少しでも貢献できればと考えておりますので、こうした新たな発見を勉強しつつ、骨基質の観点から多くの発見ができるよう研鑽を積まなければならないなと思いました。
海外の学会に参加させていただくことで、世界中の多くの先生方が志高く研究をされていることに、非常に感銘を受けます。私は今年大学院の博士課程の最終学年ですが、今後も研究を続けていき、微力ながら何か人の役に立てるような発見をしたいと思いました。そしてまたこの場所で発表することができるよう、日々頑張ろうと気持ちを新たにすることができました。
ジョージア水族館にいた、アルビノ・アリゲーターです